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デェーとティー
ポキモンGO、月子もGO! 新米シェルダーに忍び寄る魔の手!

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 ポキモンGO、日本上陸!

 ポキモンGOとは、拡張現実(AR)に現れたポキモンを捕獲・育成・交換・バトルして楽しむスマートフォン向けゲームアプリ。

 海外ではリリース直後から社会現象になっていて長らく日本版での発表が待ち望まれてたんだけど、この度遂にこの日本、向陽町にもポキモンがやって来た!

 クラスではもう、ポキモンの話題で持ちきり!ウフ、月子もハマっちゃうぞ♪

そんなノリでケータイにポキモンGOを落としてみたんだけど。。。


 「やめとき、やめとき~ポキモンなんて~。あんなのただの子供だましだよー。すぐにみんな飽きるに決まってんじゃ~ん」

 「そっそうかな?」下校途中、一緒に歩いていた泉さんがわたしの話を聞いて呆れたように両手を掲げて首を振った。泉さんはわたしが学校でも仲良くしてる友達で、卓球部のマネージャーを務めている。

 今日も練習の終わりで学校指定のシャツの上から赤いジャージを羽織っている。夏なのに暑くないの?と聞いたことがあるけど「やっぱりスポーツは身だしなみからでしょ!」と以前わたし達に答えた経緯があって、本人もマネジをやる時はジャージを着ていないと気乗りがしないらしい。

 「なんかさ~ポキモンがらみでいろいろ事件とか起こってるじゃん?そーいうの見ちゃうとあんまりやる気なくなっちゃうんだよね~」

 わたしは両手で掴んでいたケータイの画面に目線を落とした。

 ちゃんと「周りをよく見て遊んでください」と起動時に注意文が表示されるんだけど、それでもユーザーが夢中になって画面を見てしまい屋外を歩きまわり、溝に落ちたり、歩行者に衝突したり、転倒したり、負傷したりするケースが続出している。また立ち入り禁止の場所に侵入するなどということも発生しているぽい(wikipediaさんより)。

 画面を人差し指でタップすると今朝わたしがゲットした“ぴにゃチュー”が短い手で顔をこしこし洗い始めてる。うわは、かわいいなぁー。「ちょっと月子危ないよ」「うわぁ!」

 泉さんがわたしの肩を掴んで乱れていた進路をなおすように歩道に引き戻す。言ったそばから田舎道の途中にある用水路の溝に落ちてしまいそうになっちゃった。しっぱいしっぱい。

 「気をつけなきゃダメだよー」「そ、そうだよね、ごめんなさい」「うわ、ほら、アレ見てよ」泉さんが表情を歪めながら向陽町の観光マップ看板に群がる男子中学生の群れを指差した。

 「あ、あそこは...」わたしは歩くのをやめて携帯の画面を覗き込んだ。そこはゲームを進めるのに有利なアイテムが貰えるポキスポットとなっていて、彼らはその場所を拠点としてポキモンを集めているっぽかった。少年達が口々に泡を飛ばしながら言う。

 「おっしゃー、トリピーげっとー!」「あっクソ、逃げられた!」

 「もっとポキモンおびき出そうぜ!」「だれかルアー置けよ!」

 ケータイ片手にはしゃぎまわる彼らを見て泉さんがひと言、「キモいよねー」と一瞥した。

 誰もが冴えない外見をしていて、精液を吐き出したぱんつをそのまま穿いて学校通ってそうなスクールカースト最底辺の連中が学校で吐き出せない鬱憤をここぞとばかりにモンスターボールと一緒にポキモンにぶつけている。

 ポキモン GOはGPS位置情報と連動してるから、同じ場所に留まると実質的にほとんどプレイ進行できない仕様になっていて、レベルを上げたりポケモンを捕まえるには、半強制的にでも外出して歩き続けなけくちゃならないから、体を動かす相乗効果として精神疾患の改善が偉い博士から指摘されてたり、同じようにプレイするユーザー達のコミュニケーションツールとしての活用が期待されているんだけど、そもそもそれをゲームでやるんじゃなくてもっとリアルで運動したりお互いが熱中できる話題を共有したほうが絶対良くって、それをゲームに頼りきってるってのが精神的にも不健全で、ゲームにしか居場所が持てない人達がたくさんいるって言うのが現代社会が抱える病巣なんじゃないかなぁ、って月子は勝手に考えてる。

 「一緒に混じってやってくる?」泉さんがわたしの顔を見ながらにやけた。今日の泉さん、なんか意地悪だなぁ。「いや、いいよ」わたしは俯いて携帯を掴んでいる右手をだらんと下ろした。

 「じゃあね、あたしこっちだから」十字路で泉さんがわたしに手を振った。「うん、また明日」わたしも携帯を持ってる反対側の手でバイバイした。

 わたしはさっき通ったポキスポットになっている看板を振り返ってため息をひとつ。どうしよう?ポキモンはやりたいけど、キモいオタクらに混じってまでポキモンをゲットしたくない。それにこの猛暑の中、出るか出ないか分からないポキモンのために町中歩き周るのも億劫になってきた。

 何かもっと効率的な方法はないのかな?例えば。。。


 「おう、こないだの」後ろから背の高い男の人に声をかけられた。びくっとして振り返るとそこにはこの間お世話になったお兄ちゃんの友達が自転車乗りが着るようなぴっちりとした服装で立っていた。彼も部活かなんかの帰りなのかな?確か名前はスメラギくん。彼はわたしが持っていたケータイに視線を落とした。

 「なんだポキモンやってるのか?」わたしは黙ってこくん、と頷いた。

 「オレの家、ギャラどん出るけど...来るか?」「えっ、伝説のドラゴンポキモン出るの!?」思わず大きな声が出てわたしは口許を両手で隠す。それを見てスメラギくんが歩き出した。

 「待って、月子も一緒に行く!」わたしが横並びで歩くとスメラギくんがわたしのほうを見てにやり、と笑った。

 泉さんはあんなこと言ってたけどわたしはポキモンを続けるよ!人前で恥をかき散らかす陰キャ達なんかに負けたくない!月子がレアでさいつよなポキモン、みんなより早くゲットしてみせるんだから!


あ、後編ありますけど、誰もが予想できる展開です。それでも良いというのならお付き合いくださいまし。ワァオ!


       

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