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2 四月三十日 メトロトロン| 硬質アルマイト

「時が編める」という不思議な「彼」。
平成最後の日に東京に帰る飛行機、隣にいた「彼」が僕に話しかけてくるところから物語ははじまる。「時を編む」というのは、関係者の記憶の改竄を通じて、現実をも動かす、一種の超常的な能力であるようだ。堂々たるSFである。

不思議な「彼」との出会った後、「僕」にとっての平成最後の日は非常におぼろげなものとなっていく。元恋人の「ミリ」と男友達の「サトル」。別れたはずの彼女/彼との未来可能性。夢か現かも覚束ない気分は、いやに鮮明な渋谷駅近辺の描写によってさらにふわふわしたものとなっていく。この読後感は、ちょうど、酔っ払った翌朝、記憶の大半は飛んでいるのに断片的な映像だけやけにはっきりとフラッシュバックするあの感覚に近い。

私には別れた恋人からの結婚式に招待された記憶など、もちろんない。
けれども、どこか頼りない「平成」の記憶、何か他にもいろいろ可能性があったような気分、あるいは何か重要なことを忘れているような気分、というのは確かにある。そういった、酩酊感を掘り起こされるような作品だった。

以上。

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Neetsha