Neetel Inside 文芸新都
表紙

じんせいってなんですか?
ハロー、ハッピー。

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 僕は夏が怖い。小さな僕はずっと布団に包まりながら夏にひたすら怯えていたんだ。蝉の鳴く声、茹だる暑さに……。今思い返しても理由はそこまで明確ではない。
ただ二十を過ぎた今でも夏という季節に怯えているのは馬鹿らしいとは思わないか? いいや、この問いは同調を促しているものではないんだ。こんな醜い恐怖を抱いた奴に同情するっていう奴の方がおかしいからね。僕は逆に同情した奴を同情してしまうよ。
でもさ、ただ……。どうして僕はそこまで夏に怯えていたのかが覚えていないんだ。不思議だろう? こんな年になっても怯えているんだからハッキリと覚えているはずだろう? 
例えばそう。君のトラウマはなに? …………。自転車に乗れない、それはどうして? …………。ふーん、骨折したから、ねぇ。ほら、僕より鈍間な君でさえトラウマの起因ははっきりと覚えているだろう? 
なのに、どうして僕は覚えていないんだろう。あぁ、馬鹿な自分が恨めしいよ。
あ、コーヒー、おかわり、する? ケーキだって食べていい。何でも食べていいよ。今日から君は僕の彼女なんだから。いっぱい食べる姿が僕の幸せー、なんてね。アハハ、惚気すぎたかな。まぁ、これが僕の秘密だよ。だから夏はずっと一緒にいよう。今年の夏はもう終わったんだけど…、どうせ来年はある。来年からずっと一緒にいれば僕の怖さも軽くなるからさ。
……ほら、もう食べないんだったら出よう。君の行きたいところに連れて行ってあげよう。どこに行きたい? 
教えてくれたら、僕はもっと幸せになれるから。

       

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Neetsha