・
草野へ
最初に、何も伝えず街を飛び出した非礼をお詫びさせてください。
ごめんなさい。
あらためて、田原の件はありがとう。この街に私を縛る魔法を解いてくれたのは、草野です。本当にありがとうございました。
大学を卒業して、草野が東京へ行った時。私は本当に貴方の事を恨めしく思いました。高校時代、初めて草野と会って間もなく、私の書いた文字を馬鹿にされたとき以上に。
だから、五年ぶりに同窓会へ現れた草野を見た時、恨めしく思いました。だけど、それ以上に安心していた自分も居ました。
草野は昔から頼りなくて、もしかしたら何処かで野垂れ死にしているのではないかと思った時もあります。だから、同窓会で再会した時、私は安心したんだと思います。
とはいえ、草野を許すことは出来ないので同窓会の席では、冷たく当たったり、不必要に目を細め、睨み付けたりしましたが、気がついたでしょうか。この件については私に非が無いので、お詫びしません。ただ、私の気持ちが少しでも分かるなら、少しだけでも反省してください。
上から目線の偉そうな内容で、草野も少し気を悪くしていると思うので、この辺りで最後にします。
先日、同窓会で草野を魔女裁判にかけたら、有罪。火炙りの刑だと話したのを覚えているでしょうか。
あらためて草野を裁判にかけるなら、無罪放免といったところです。おめでとう。
字を書くのが苦手なので、まともに手紙を書くのは、初めてです。
ずいぶん字が綺麗になったと思わないかな?考え方を変えてみれば、草野のおかげかもしれないね。
ありがとう。
追伸
学生時代、田原に嫉妬していませんでしたか?
今度、会った時に答えを聞かせてください。