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   「魔法少女アリス The Killing」   作者:どんべえは関西派

   【作品内容】
 昨今において、もう魔法少女というタイトルはダークな印象を内包する単語と化してしまいました。この作品もその影響を受けてか、まるで魔法少女らしい出だしではありません。だって主人公開始早々エグイ死に方してるんですもん。
 生きたかった、生きていていいのだと言われたかった少女が世界に何を求めるのか。ちょっとファンタジー臭のするこの作品を第二回感想の初手として行きます。


   【物語詳細】

   『終末』

『 生きていていいのか。
 誰にでもなくそんな疑問を投げかけた女に返る答えは無く、大量の血を体外へ溢れ出させて女は身に迫る死を実感する。
 絶命を急ぎ刃を首元へ向けた女は、ふと自身の本心に思い当る。
 生きていてもいい。
 そう、自分ではない誰かに言ってもらいたかっただけの、たった一つの本心を、斬首する間際に女はようやっと認めることが出来た。』

 なんでこの人こんな大怪我してるんでしょう。バトル?バトルなのこれ?大丈夫?もしかしてこれ円環の理に導かれる系だったりするの?魔法少女だし。
 こういう生死のなんやかんやは自分も学生の頃によくよく考えていたりしましたね。そういうの多感なお年頃だから。
 第一話にして死んだ主人公(?)は次でどうなるのか。


   『ベリアル 出会い その①』

『 母親を事故で亡くし、以来身元引受人となった男からあらゆる面での虐待を受け続けてきた赤城アリスは、何に関心を示すこともなく世界を惰性で生きていた。
 授業時間全てを保健室のベッドで過ごしたアリスは、ふと思い立って放課後の屋上へ向かう。
 あらゆることへの興味を消失させたアリスがなんの面白味も無い町を屋上から睥睨していた時、背後から奇妙な存在に声を掛けられる。
 ベヒーモス・クライシスと名乗るこけしのような外見の人ならざるもの。そのこけしが、アリスが魔法少女に選抜されたことと、その使命をもって世界を救ってほしいという突拍子もない話を持ち出してくるのを、冷めた瞳でアリスは一蹴するのだった。』

 ちょっと予想よりキツイ設定だなアリス…。虐待受けてボロボロの女の子とかに興奮する性癖は持っていないもので、文字だけでも結構個人的には来るものがあります。
 クライシスも人選はしっかりした方がいいんじゃないですかね。もっと希望に満ち溢れた少女とかが選ばれるべきでは?何か選抜条件があるのかもしれませんけど。


   『ベリアル 出会い その②』

『 クライシスの物言いには有無を言わさぬものがあり、持ち出された交渉材料を前にアリスは半ば強制的に魔法少女としての使命を架される。
 魔法少女としてアリスが成さねばならないことは、クライシスが対立を示唆する存在スパラグモスと正体不明のオモバギア、これらの殲滅というものだった。
 契約関係を結び、アリスは闇に沈み込みながら魔法少女としての存在を構築する。』

 もうこれ魔法少女っていうか魔女でよくない?大昔のおどろおどろしい印象の魔女ってのがこの話での魔法少女という枠組みでしっくりきます。まあ、ここ最近はダークな内容で魔法少女銘打っておけば食いつきもよくなったりしますからね。そういう意味では魔法少女のままでいいのかも。
 選ばれた理由はやっぱり適当でしたか。クライシスってヤツはちょっと自分勝手な印象。言うこと聞かないなら唯一の肉親殺すぞとか無茶苦茶すぎる…。そもそもアリスがこんな酷い状況なのに妹は一体どこで暮らしているんでしょうか。離婚した父親の方に引き取られたのかな。
 敵の親玉?は月の裏側にいるとか。八つあるってことは敵も八人?スパラグモスってのは敵の総称だったりするんですかね。


   『ベリアル 出会い その③』

『 晴れてクライシスとの契約を完了させたアリスは、特に何か感慨を抱くこともなく帰路につく。その途中、アリスを呼び止めたクライシスは付近にいるという最初の敵の存在を告げた。
 大通り、車道を挟んだ向かい側にいたのは隣町の中学校の制服を着た同性の敵。対話の余地すら見せず変身を遂げた相手に自身も戦意を見せるアリス。
 魔法少女特有の戦闘コスチューム、魔導麗装の展開を確認して能力の説明を始めるクライシスだったが、満足な説明を終えるより前に戦闘は開始された。』

 殺伐としてるなあ…。そういえばこの子中学生だったなーとも思いました。魔法少女って小中学生がやるのが主流なんですね、やっぱり。
 周囲には関係の無い一般人が多くいる大通りのようですけど、多分この魔法少女らはそんなことはあまり気にしないでバトル始めそう。元々生きる気力の薄い者同士っぽいですし、他人の生き死にとかも興味無さそうです。
 心理描写はともかくとして、情景描写や身体描写がもう少し細かく欲しいですね。


   『ベリアル 第一戦 その①』

『 二人の魔法少女が一太刀交わし合い、次いで攻防を展開しようと互いに握る武器に力を込めた時、それを横合いから邪魔する者がいた。
 相手方、スパラグモスの魔法少女には車道上に出てきたことで通行できなくなったドライバーが、そしてクライシスの魔法少女ことアリスへは興味本位で近付いてきた一般人が。
 双方殺し合いの最中に余所見をするわけにはいかずども、それを理解できるほど周囲の人間達は賢くなかった。しつこく付き纏う一般人に苛立ちがピークに達したアリスは、一切の躊躇も無く持っていた剣の切っ先を男の腹へ沈ませた。
 この世界へ期待も希望も持っていない暗黒に染まる少女達にとって、安穏を維持する世界への遠慮や手心などといったものを持ち合わせる道理は無い。』

 アリスがかなり歪んだ子で見てて怖いというよりかは不憫という感情が沸き起こって来る。本質でこれなら仕方ないんだけど、多分これ虐待で性格捻じ曲がった結果なんだろうし…。レンゲとかはどうなんだろう、似た様な境遇だったりするんでしょうか。
 あとこれ事後処理どうするのか。もう大惨事なんですけど…。


   『ベリアル 第一戦 その②』

『 周囲一帯から一般人の消え失せた大通りで、人外の力を振るう少女達の戦闘が勃発する。
 相手の挙動に不審な点を見出したアリスは、それを見極める為にある行動に出た。
 そうして左腕一本を犠牲に相手の能力を看破したアリスは、あっさりと決着の一手を打つ。』

 腕一本切り落とされたのにわりかし冷静なアリス。魔法少女としての能力も簡単に使いこなしているし、適応力が高いですな。
 もうちょっと派手にドンパチやるのかなーと思っていたら、どうも決着がついた様子。話を切る地点はもう少し考えた方がいいかもしれませんね。少し中途半端な切り方かも。


   『ベリアル 第一戦 その③』

『 相手の魔法少女を上と下とで両断したアリスは、敵の絶命を見届けてからふと自身の内側から込み上げて来る感情に気付く。それは長らく忘れていた「楽しい」という心。
 狂ったように笑い続けて、アリスは人殺しの快感にしばし酔いしれる。魔法少女として人を殺し続けることを決めて、その目は未だどこにいるのかも知れぬ次なる敵へ向けられる。』

 目的の為には無感情に駒を扱うように魔法少女をこき使うのだと思っていたクライシスも流石にドン引きでしたね。
 歪みに歪んだというか、一周回ってこれがアリスの本性なんじゃないのかと思えてきました。なんだかんだで人を殺すこととスパラグモスを殺すことで利害の一致が発生したこのコンビは今後どうなっていくのでしょうか。個人的には完全にクライシスが人選を誤ったとしか思えません。これ今後の犠牲者も絶対魔法少女だけに留まらないだろ…。


   『アドラメレク』

『 それはスパラグモスの魔法少女―――青木蓮華の人生。その追憶。
 何もかもをも諦めてきた。諦めさせられてきた。それは何故か、それは誰のせいか。
 誰を咎めることも誰に責任を求めることも出来ず、青木蓮華は恨み嘆くことすら諦める。
 そんな折に現れた、スパラグモスと名乗る異形の者。その出現こそが、蓮華の人生に終着をもたらす存在だった。
 彼は提案を呑んだ少女に告げる。それは青木蓮華という人間の短い一生を端的に表すにもっとも適した言葉、「諦念」を象徴するアドラメレクの悪魔。
 背負う悪魔の名に恥じぬ、諦め切った死を少女は笑って受け入れた。』

 蓮華もアリスと似たような境遇だったってのは当たってました。こんな終わり方で蓮華は本当に良かったんですかね?
 初めから終わりまで諦めのみで生きて来た少女としては、らしい終わり方だったのでしょうが…なんともやりきれない気分にさせられました。
 スパラグモスの一柱を折り、残りは七つ。


   『ベリアル 学校 その①』

『 魔法少女としての初仕事から二日後、嫌々ながらも学校へ向かったアリスはいつも授業時間の全てを消費している保健室の鍵が閉まり保険医が不在の旨を知り絶望する。
 仕方なしに自分のクラスへ向かうと、アリスの机には死者を弔う献花が活けられてあった。典型的なイジメを行っていたのはアリスを目の仇にする少女宝樹。陰湿なイジメを受けて、アリスは不愉快げに瞳を細めるのだった。』

 やめとけ殺されるぞぉ…(小声)。
 ヤバい、宝樹とかいう馬鹿女がアリスの手でブチ殺される未来しか見えない。流石に学校内でそんな惨劇を起こさないとは思いますけど、歪みっぷりが半端じゃないからなー…。
 ハラハラしながら次話へ。


   『ベリアル 学校 その②』

『 女子トイレで宝樹の取り巻き二人に絡まれ水を浴びせられる中、ふとした一言に不快感を覚えたアリスは魔法少女の力で取り巻き共を殺すことを思い付く。それを邪魔したのはクライシスの叫び声で、続けて放たれた敵接近の報告にアリスは即座に行動を起こした。
 またしても一般人の多い学校内というフィールドでの戦闘にもお構いなく、二人目の刺客へと溜まった鬱憤をぶつけるように闘いは始まる。』

 はい死んだ。でも宝樹は助かりましたか、運の良い。
 また大勢死にますよコレ。間違いない。どうせ今回の敵もちょっとイカれてるんでしょ?
 しかしまあ、最初はいきなり無関係の少女を問答無用で巻き込んだクライシスは酷いヤツだと思っていましたが、今では一番の良識人(?)だという認識になりかけているのが恐ろしい。周囲がクズとか狂ってるのしかいないと相対的にまだ真っ当な常識を持ってる者が途端に人格者に見えてきてしまいますね。


   『ベリアル 第二戦 その①』

『 突如襲撃を仕掛けて来た魔法少女との戦闘の中、まるで意に介さず巻き込まれ爆ぜていく生徒や教師達の死骸が宙を舞い飛ぶ。
 耳をつんざく悲鳴や怒号、飛び散っていく血肉。その中で愉悦に染まるアリスの狂気に満ちた笑い声が混じる。無数の命を奪いながら攻防を続け、アリスは銃を扱う相手の能力を見抜く。
 勝利を確信して攻撃を放とうとした瞬間をクライシスが妨げ、彼はアリスが敵の能力を暴けていないこと…すなわち固有技能である能力学習が発動していない事実を忠告した。』

 この子達はほんと、会話を放棄してますね。もうちょっと、ねえ?相手の意図とか目的とか、対話を試みてもいいんじゃないです?出会い頭にいきなり『死んで』は唐突過ぎて。
 能力学習、コピー能力は案外緩い定義で会得できるんですね。範囲切断もあっさりパクれちゃったし。
 銃使いの魔法少女もさほど強く思えるような描写も無かったですが、前回の斧使いよりも強いということであればもう少しその辺りを細かく書いてほしいです。能力の扱い方が前のヤツより格段に巧いとか、戦術の練り方が玄人クラスだとか。


   【人物】
 とりあえずおかしい。みんなおかしい。
 主要な人物はどっかしら大体おかしい。
 いやおかしいこと自体は別にいい。狂気の渦巻く殺し合いの話であればむしろ狂っているレベルが高いことはキャラとしてのアドバンテージにすらなりますから。
 ただ、どっかしらおかしいにしても、その狂い方がほぼ同じなんですよね。魔法少女であれば、殺すことに躊躇いが無いことや街中で戦闘をおっぱじめるような常識の無さ。共通項が多いんですかね。
 同じ『殺しに迷いが無い』という狂気においても、たとえばアリスのように歪んだ結果人殺しに快感を覚えるタイプだったり、相手を同じ人間だと認識していなくて羽虫を叩き潰すような感覚で視界に入った人間を殺す意識の共感が出来ないタイプだったりと、色々あると思うんですよ。ただ世に絶望して魔法少女化、そして人殺しに罪悪感を覚えないだけ、というのは少し飽きてしまうかなと思いました。
 展開上、少なくとも未登場の魔法少女は最低でも六人。そしておそらくその大半が頭のおかしなヤツなのでしょう。これで残りの少女が全員この手の狂気に染まっているだけのキャラだった場合、自分であれば三人目でもう飽きます。だからもう少しキャラクターに癖というか色を与えてあげるといいかなー、と。


   【文章】
 まず思ったのは、句読点をしっかり付けましょう。文の最後に『。』が無いと意図的に切っているのかそうでないのかがわかりません。連続する文の中ではしっかり付いているので、文の終わりにも付けたほうがいいですよ。それと文中で一度切って、それからスペースを空ける必要も無いかなと感じます。
 たまに接続詞が抜けているのも気になります。~で、~は、といった具合に何をどうしたかを説明する場面でたびたび繋げる文字が無いと読み進める途中でおや?となります。ことバトルものでは勢いが大事です。盛り上がる場面でこうなると蹴躓いて読み進めるペースが乱れてしまい勢いも失速してしまいます。
 あと誤字脱字も多いですね。漢字の打ち間違いや意味の通らない単語の出現が目につきました。
 表現方法も少ないような。光弾を撃った時の表現が爆発四散を多用したり、魔導麗装や武器や光弾を生み出す時も顕現という文字だけで表してしまっています。もう少しこう、表現の幅を広げてみれば如何でしょう?せっかくの魔法少女もの、コスチュームの出現方法くらいは凝ってもバチは当たらないですよ。だって変身シーンは醍醐味だもの!


   【ざっくり感想】
 なんか色々言ってしまいましたが、でも直すべき部分を直せばより面白くなると思うんですよ、はい。
 もちょーっとキャラを好きになれるように、思い入れを込めればより魅力的になると思うし、戦闘シーンだってもっと臨場感出せたりするんじゃないでしょうか。ほんと偉そうなこと言ってばっかだな自分は。
 でもでもせっかくの感想の場なので、遠慮とかそういうのは抜きの方がいいと思うんです。だからあれやこれやと言わせて頂きました。癪に障ったらごめんなさいです。
 アリスの能力コピーは条件もそこそこ厳しめだし、相手の能力次第でも戦闘はより心理戦となったり情報の探り合いとなることもあると思います。そういった場面で、如何にして相手の口を開かせるか、能力の情報を引き出すか、という辺りで頭を巡らせることは作者にしかできない特権です。楽しみつつ、悩みつつ!相手をこう出し抜いてやれば盛り上がるぞ、緊迫するぞ、という思考を常に持っておくと、書いてて楽しくなるんじゃないでしょうか!
 ちょっと熱くなってしまいました。でもそういうことなんです。作者の方々には、そういう物語を作る上での熱意や意欲というものを高く持っていてほしいなーと。きっと、そうすれば必然と文章を生み出す力は上がっていくはずです。絵を描くのと、こういう部分は共通してますかね?
 長々と腹立つ文章を連ねてしまい申し訳ないです。というわけで、これで魔法少女アリスの感想を終えたいと思います。次の更新、合わせてくれなくても読みます!

       

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