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   「 トゥー・レイト・ショウ」   作者:えろま

   【作品内容】
 ついに来たエロ小説!第二回ニノべ感想の中で最難関だと思っていますコレ。なので早い内に読んでおきたいと判断しました!
 とりあえずざっと読んでみて思ったことは、長いの一言。そしてこれが適当な文章で作られた中学生の妄想みたいなエロ小説なら適当に流し読んで感想も書けたものでしょうが、この作品そうもいきませんでした。何故ならば、普通にレベルの高い官能小説だったからです。
 新都社でここまで詰め込まれた官能はそうそうないのではないでしょうか。馬鹿にしているのとかでは一切無く、純粋にこのジャンルを突き詰めて書き連ねてきたえろま先生はとんでもないと思います。絵でエロを表現するのよりも文字で表すことの方が遥かに難しいと考えている自分としては是非とも頑張って全て読んでみたいと思いました。でもすみません他の作品も押しているので、ひとまずは手短に読み終えたいくつかの短編や中編あたりから感想を始めていきたいと思います。


   【物語詳細】

   『マウス・トゥー・マウス』

『 少年は少女に告白した。理由はそれほど深いものでもなかった。そして少女も予想外にあっけなく、その告白を受け入れた。
 振られることを前提に考えていた少年・草刈慧は面食らってしまったが、告白した相手である上倉かなめが続けて放った忠告めいた発言に眉を顰める。
 彼女は奇妙なことを二つ口走ったのだ。曰く、付き合うからには必ず結婚まで遂げること。いや、二つ目を聞いたあとではこの一つ目程度は奇妙の内にすら入らなかった。
 かなめは、自身を妖怪と自称したのだ。それもかなりの異形であると。
 それを半信半疑で受け止めた慧が真実を知るのは、その日の内に彼女の家へ招かれてからであった。』

 学校の怪談はオープニングの方が好きです自分は。きみのこーとーわたしのこーとー。天邪鬼がカッコ良かったんですよねぇ。
 まあそんな話は置いといて、慧の肝の据わりっぷりが半端ないですね。自分だったらいくら可愛い女の子でも腹が裂けて牙と舌が現れたら泣き叫んで逃げます。それだけの肝の持ち主だったからこそ、異形とも結ばれたんでしょうけども。
 ヴァギナ・デンタータ……有歯膣、牙を持つ膣などと呼ばれる民間伝承の一つですね。男としてはかなりモノが縮み上がる怪物ですが、今作では外見は可愛らしい少女のようで。
 性交相手がかなり特異な存在ということで、エロに関してもその辺りはアブノーマル?な感じに仕上がっています。だがしかし、その手のプレイに興味のない人間が見てもただドン引くだけでなく、きちんと興奮させてくれる辺りがやはり官能小説として完成されているなと感じました。事実自分は興奮しました。お恥ずかしながらね!
 かなめをただの人外としてでなく、一人の少女として見てくれている慧の男らしさにちょっとグッと来ました。コミカルな性格である慧だからこそかなめも心を開いて愛することが出来たのでしょう。エロだけでなくきちんとストーリー性もある短編で非常に読み応えがありました。自分も体内でドロドロになるまで愛されたい!!


   『祓魔の血脈、滅鬼の器』

『 代々から祓魔の力を継承し続けてきた日ノ本お抱えの一族、瑙乃家。
 その強大な力を初代から衰えさせない為に、この家では当然のように近親交配が行われていた。しかし、それは決して瑙乃家の女を選りすぐって孕ませていたわけではない。
 七百年前より、歴代当主は元より瑙乃家の男を産んできたのはただ一人の女。ただ一人の妖。
 祓魔の一族の大元である瑙乃光時に討たれ、調伏させられた偉大なる大妖怪の末路が、その家の深部にはあった。』

 一族の男は総じてロリコンでペドフィリアなのか…なんて恐ろしい家だ。
 濡尾花凛光女、でしたか?似たような語感で歌舞伎の露尾花野辺濡事というものがありますが、もしかして元ネタはこれかな?関係ないか。
 官能小説なのにいやに祓魔とかの設定が凝ってて凄い(小並感)。もうこの設定で悪しき妖怪と戦うお話作れちゃうんじゃないですか?
 三つ子兄弟の中で光海だけ飛び抜けて性癖ぶっ飛んでて笑いも引き攣るレベル。子宮引き摺り出すとか同人誌でもそうそう見ないですわぁ…。
 そんなイカれた光海が自身でも言っていたように、この瑙乃家はかなり特異な環境にあるせいで人格や性格が歪みやすいようですね。まあ母親が妖怪でその上さらに祖母で妻だったりしますからね、しょうがないですね。
 愛の形は人それぞれ、ということなのか光陸は望んでいた結果にも関わらずいまひとつすっきりしない末路でした。花凛ちゃん可愛いけど可哀想。
 初代様のエピソードもちょっと見たかったですね。


   『女中の袖に手を入れて(完結)』

『 酷い環境の娼館で薄汚い性欲の捌け口にされ続けてきた年端もいかぬ少女マルカは、突然現れた富豪の青年に高値で買い取られたことに疑念を拭い切れないでいた。
 青年の住む館のメイドとして主に性欲処理を行うことを告げられたマルカは、そこで実質的なメイドとしての働きを見せる機械のような冷たさを感じさせる満月と、この館の主である青年ハルとの三人暮らしの中で徐々に心が満たされていくのを実感する。
 それはマルカが下衆な男共に犯されるだけだった日々の中で切望していた家族の温もり、彼女の求めていた幸福の形そのものだった。』

 女中シリーズ三つもあったから、とりあえず完結済みのものを読了させて頂きました。多分これが最初のやつかな?
 その前に見た二つが似たようなヤツだったから、あーどうせまた人外とか化物とかと変態チックでアブノーマルなプレイがおっぱじまるんだろーなーとか思いながら見始めました。
 ちょっと泣きそうになったんですけど。
 いやアブノーマルが過ぎて見るのが辛かったとかそういうんじゃなくて、単純に物語に感動してしまいました。なにこれ、官能小説じゃなかったの!?
 やめてください自分こういう系弱いんですから。マウスと祓魔で完全に先入観刷り込まれてたせいで余計に不意打ち感が半端なかったです。くそっ目頭が熱い…!
 単純にエロシーンもさることながらマルカ・ハル・満月の関係性や過去のシリアスとかが相まって色々とやばかったです。ハルに対するマルカの純愛と満月の異常性愛で一度に二回おいしいお話になっていると思いました。
 物語がこの話だけずば抜けているような気がしましたが、きちんと異常なまでの変態プレイもきっちり押さえてある辺り、この作者さんは顧客のニーズにしっかりお応えしてくれる人なんだなーと思いました。でも自分は純愛好きなので心情的にはマルカのドン引きに共感してました。
 

   【人物】
 短編二つと長編一つを読みましたが、どう考えてもマルカが正妻メインヒロイン大正義だったんだよなぁ……。というか、かなめと花凛が人外の常識外れ過ぎて自分には次元が違うんだなと突き付けられました。でも性欲は刺激されました。
 キャラクターの練り込みがしっかりしているので、それぞれの話でもきっちりそれぞれの輝きを保ったままでいられるんだなと感じます。まあ短い人生を喰われて終えることに一切の躊躇いを見せない慧や光陸とかはちょっと頭おかしいんじゃないかと思わないでもないですが、そういう世界観なので仕方ないですよね!


   【文章】
 普通ネット小説って多かれ少なかれ粗があるのが当然だと思っているのが自分の感覚なのですが、なんだか久しぶりに書店で買って来た小説を読んだような気分になりました。
 言い回しや表現方法に無理なくすんなり頭に入って来るわかりやすさがあり、それでいてシーンの動静やシリアス・ギャグの書き分けがとても上手い。空気を読んだギャグはあっても読まないギャグが無いという感じでしょうか。あるべくしてあった必然というか、無意味にふざけた結果滑って萎えるような場面が無かったです。自分的にはね?
 そして本命のエロ。あなたもしかして異世界で触手攻めとか拷問で快楽攻めとかされたことあるの?聞きたくなるような生々しさのある文章でした。頼むから幼女を異常性癖で犯し尽くした経験があるからこそ書けましたみたいなオチでないことを強く願います。もしそうだったら鹽竈を呼んでください混ざりたいです。


   【ざっくり感想】 
 結果としては最初に抱いていた懸念は一切消えました。今は晴れ晴れとした気分で言えます。これは良い官能小説だぞと。
 自分はたまにギャルゲーエロゲ―を嗜むのですが、キャラに重きを置くがあまりに主人公とヒロインとの関係性や展開、物語がすっかすかになってて『なんでコイツらたいしたイベントや過程も踏んでいないクセに相思相愛でラブラブしてんの?』と意味不明っぷりに半ギレしたりすることがあります。
 ようするに、相手を好き好きになるのなら相応の理由がいるだろうということです。世に溢れている官能小説でも言えることでしょうが、相手のモノが規格外の大きさだったからって、それを強引に挿れられただけで許嫁や夫がいる女があっさり堕ちるのは流石におかしいだろ!!と声を大にして叫びたくなる時があるということです。
 いいんですよ別に、ただ性欲を発散させたいときに使うだけならそれでもいいんです。でも個人的に好きなキャラや世界観の作品だったりしたときにこの例が適用されちゃうとうーんってなっちゃうんです。
 …あれ、話が逸れましたか。まあそういうことなのです。
 そういう点ではこの作品は良かったのです、とても。この作品ってか、もうこれ個人的には女中の話になってる気がしますね。女中シリーズは残りの二つもお盆休みに読みます。
 そんなわけでえろま先生のトゥー・レイト・ショウの感想は今回はこの辺りにさせて頂きます。これも時間を見つけて残りの感想書き上げられたらいいんですけどね…。

       

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