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   「三姉妹の夏休み」   作者:DAI

   【作品内容】
 第三回感想の一発目、時期的にドンピシャな真夏のお話。一人暮らしの中野桐緒のもとに突如としてやってきたのは、幼く姦しい三人の姉妹だった。ということで。
 短編なのでわりかしさっくり読めました。幼女が好きで妄想力が巧みな方は手早く頭に入り良いかもしれません。ラノベ脳の鹽竈はそういう部類でした。短いなりにも感じたことが多々あったので、少し長めの感想になりますかもです。


   【人物】
 そこまで主要な人物多くなかったんでそれぞれに想ったことをば。
 中野桐緒。テンプレートの化身のような男。受け身なやれやれ系にして難聴系。お前は一刻も早く病院に行って鼓膜見てもらえ!と叫び出したくなるほど典型的な主人公。
 十八歳で一人暮らしは大変。好き勝手できますけどね。どうやらメイド属性に傾いている模様で、しかしヘタレ。料理はそこそこ出来る。
 短編故に、この男が大学の知り合いや三姉妹に好意的な感情を向けられるような人間だったのかが謎でよくわからなかった。いや嫉妬じゃありませんよ?ありませんから。
 良くも悪くも何かが起きるまでは自分から動こうとしない受動的なラノベ界の鑑たる桐緒に懐く三姉妹。長女凛々香は一番幼女っぽい。この性格に意味不明な言動と急上昇急降下が激しい不安定な情緒が加わるとマジで元気なリアル幼女に近付きますよっ。
 意地っ張りだけど怖がりで泣き虫な次女の京香は艦これの暁みてーだなと思いながら読んでおりました。立派なレディーとか目指してるのかな?幼女に抱き着かれてんだから性欲云々とかではなく普通に寂しがって親の温もり欲してることくらい理解してやれ鈍感テンプレ男よ。
 便所虫 < ミジンコ < なまこ << 馬の骨 <<< 夫?みたいな感じの不思議なヒエラルキーを持っているらしき三女の香恋。えちょっと待ってカタツムリが一番上って言ってたけど、じゃあカタツムリが夫の上に来るわけ?どういうことなんだ……。
 六歳でこんな賢しいのは少し違和感だけど、まあ日本にはケツ丸出しで踊り狂う五歳児もいるわけで別にさほど気にはなりませんね!
 世話焼きな暴力系ヒロイン(巫女)というこれまた昔ながらの属性を引っ提げて現れたのは同年代で家が神社の東条睦月。しかし大学で知り合ったということはまだ半年も経っていないですよね?男が一人暮らししている部屋に単身で乗り込んでくるのは常識的にどう?貞操観念が緩んでおりますよ!?
 主人公を中心に広がるキャラクターの関係性が深そうに見えてその実すごく浅いのが気になりました。約四か月程度の付き合いがある睦月ならそこそこ好感度アップのイベントが二つ三つ起きていても不思議ではないですが、三姉妹は現れてから約一ヵ月くらいしか時間経過はしていないんですよね…?
 片想いだった香澄もそこまで桐緒に信頼を寄せる理由がはっきりしていなかったのでどうにも納得しづらかったですねー…可愛い三人娘を誰かに預けるのであれば、やはり相応の理由ないし信頼に足る何かが欲しかったところです。


   【文章】
 最初から最後まで主人公による一人称視点ですが、やや主人公の心情を地の声として出し過ぎかと。
 向けられた言葉に対する考え方やツッコミ、応答がそのまま桐緒の心の声で表現されている場面が数多く見られました。キャラクターの台詞自体もそこそこの量を占めている中、その上で桐緒の思考が連動された文が続いてしまうとその他の読者にとって必要な描写のいくつかが欠けてしまいます。部屋の内装、キャラの服装、出掛けた先の風景等々がそれに当たりますかね。
 あとはざく切りのような文章や単調な書き方が若干気に掛かりました。
 『○○へ行った。△△が□□だった。◇◇だと思った。』という風な日記帳のように思える文がいくつか散見されまして、一人称視点にしてもこれは端折り過ぎというかちょっと雑じゃないかなぁと思ったりしました。
 全体的に見て感じたことを纏めると、書くのが面倒だったりダルかったりしてもきちんと文字として表現すべきところはしないといけないな、という感じでしょうか。作者さんの脳内情景や人物、場面は文字以外では他者に決して共有されません。挿絵やイラストがあればまた別でしょうが、ここが漫画と小説の大きな違いの一つだと鹽竈は考えます。


   【ざっくり感想】
 香澄が桐緒を信用しているのがわかりました。三姉妹も巫女も桐緒のことが大好きなのがわかります。しかし、わかるだけです。何故わかるかと訊かれれば、それはこのキャラ達がそういう感情を抱くことが分かり切っているからです。三度目になりますが、テンプレだからです。
 ストーリーの開始時点で何人ものヒロインに好かれているハーレムな主人公は基本好かれません。それは主人公の性格がいまひとつ理解に及ばないからというのもありますし、そのヒロインが恋愛感情を抱くに至るまでの経緯が語られていないからでもあります。
 ようするにキャラクター性の確立と、女が男(逆も然り)に惚れる・惹かれるに足る展開が不十分だということです。
 短編にてこれをこなすことは難しいですね。一人一人にスポットを当てて個別にストーリーを作ってしまえれば楽なんでしょうが、それをすると短編では収まり切らなくなりますし。
 少しでも何らかの伏線を張ることで好意を抱く理由を判明させるか、そうでなければキャラ自体を減らして一人辺りの密度を高めるか。鹽竈の頭で考えられる打開策はこの程度しかありません。
 結局、桐緒は三姉妹を引き取ったんですかね?その辺ボカしてあったので不明ですが、なんだかんだハッピーエンドだったので良かったです!それで、『三姉妹の冬休み』はいつ投稿されるんでしょうか?三姉妹の中では香恋が可愛いなーって思ったんで、三女がメインになると嬉しいですねーあはは。
 なんていう冗談を半分本気で言ってしまうくらいには面白かったです。惜しむらくは後半シリアスだったので姉妹に萌える機会が少なかったことですね。睦月に関しては暴力か殺気を放ってる印象しか残っていない…巫女や浴衣とか和装が好きな自分としても見せ場少なくて残念でした。

       

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