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   「どろまど!」   作者:宮城毒素

   【作品内容】
 宮城毒素先生の作品。前回は『目覚める町と眠らない爆弾』を、そして今回は二回目の感想となる『どろまど!』ということで。申し訳ないことにお盆辺りから多忙極まりない私事により、【物語詳細】を省かせて頂きたい…非常に申し訳ない!
 でも一番新しいとこまで読みましたよ!


   【人物】
 このお話の中心人物はどうやら犬飼君であるらしきことが発覚。オリジナルの撲殺タイムは年端のいかない少女のようですが、これ狭間灯火ちゃんとは別人ですよね?
 でもまあ考えてみればマスターとの面識もあって病んでる琴子ちゃんの元カレでもあるわけで、わりかし登場人物の中では接点の多い方なんですよね犬飼君。最近になって隠された真実やら事情やらが明かされてきて、あーこりゃ主人公ですわーと納得しました。
 中学三年生と高校一年生の間で視点の入れ替わる犬飼少年は歳のわりにやたら達観してるなぁと思ったり。なんか簡単に人殺しとかやっちゃうみたいだけどもしかして君も頭のネジ一本くらい飛んじゃってる人?殺人が犯罪だってことをきちんと理解してる人少な過ぎない?
 特に目立った新キャラの登場も今のところは無く、そして最初期に登場した刃物少女とかの出番が一切なくてどうなるんだろうこれ、って考えながら読んでました。
 頭おかしかったりネジ飛んでたり病んでたりしてますけど、キャラとしてのブレは無いのが良いですね。これで主義主張とか発言内容とかがブレブレだったらもはやホラーでしかないですけど、どのキャラクターも皆それぞれ異常なりに真っ直ぐ異常を貫き通しているという点で、作者さんがきちんと人間性を書き分けられている証拠なのかなと感じました。


   【文章】
 違和感なく安定した文章力に感服するばかりです。なんというか、小洒落たというか小気味良いというか、そんな感じの文章です。
 ただ、意図的になのかどうかわかりませんがキャラの心理がいまひとつ掴めないですね。基準が違う、感じ方が違う、見方が違う、認識が違う、色々言い方はあると思うんですが、常人と狂人の間で齟齬や差異が生じるような感覚?うーん表現が難しい。
 例えを挙げるなら、『たったひとりで撲殺タイム』からの抜粋で、

「撲殺タイムは……本物がひとりいればいい。撲殺タイムは記号じゃない。思い込みの激しいあんたみたいな奴らを俺は―――」
 無条件に殺すことにしているのだ、と。

 …えっえっ、なんで!?
 ってなりました、自分は。お前当時まだ中学三年生の子供だろ!そんな簡単に人殺しちゃ駄目だろ!道徳の授業寝てたのかよ!ってなりました。自分は。
 確かに状況は自分が殺されかけていたわけですし、多少過剰な正統防衛もある程度は許されましょう。誰だって殺されるのは嫌ですし死ぬ気で抵抗しますとも。
 でもコイツは何か違う。初めからそうと決めていた覚悟が見えます。その覚悟がわかりませんでした。そんな容易に人を殺そうと決められる思考が共感できなかった、ということですね。
 だからですかね、出るキャラごとに『コイツ頭おかしい…』とまず最初に思ってしまうのは。
 読者が作品内のキャラクターの発言や行動で感動したり感銘を受けたりするのは、単純にその台詞やアクションに共感できるものがあるからですよね。命懸けで闘うのは大切な恋人の為だったり譲れない信念の為にだったり、それを理解できるから見てる側は応援できるし続きを楽しみにできる。
 この物語のちょっとイカれた人達も、ただ意味もなくそんな狂気を振り撒いているわけではないはずです。その根底にある『何か』を、もう少し描写でほしいかなと思いました。


   【ざっくり感想】
 犬飼君視点によってついに撲殺タイム周りのあれこれが判明してきました。物語の核心に近付いてきた感じでしょうか?キャラや文章に散々イチャモン付けてからこんなこと言うのもあれなんですが、続きを期待させる書き方がとても上手いお人です、宮城毒素先生は。
 あとは中学時代と高校時代を行き来するのは少しややこしくなるのでどっちか一纏めにしちゃった方が読みやすいなって鹽竈は思いました。この辺は『目覚める町と眠らない爆弾』においても同様の感想を書きましたが。
 どうやらこの先は犬飼君による撲殺タイムの贋作や模倣の掃討が始まるようですが、その他の人々はどう動いて行くのか。犬飼君との合流はあるのか。現時点で各エピソードの主役達がほとんど交わっていないので展開も読めません。もしかして一度も会わずに終わったりするんでしょうかね。それはそれで面白そうです!

       

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