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   「それはギルティなのですか?」   作者:宮城毒素

   【作品内容】
 はい常連作者さん宮城毒素先生の短編です。毎度毎度なんだか色々考えさせられる作品をお作りになられる先生の今作。ええ、もちろん今回も病んでます。何がって全部よ全部。


   【ざっくり感想】
 この短編においても登場人物はさほど多くはありません。他人に合わせることに意識を向けた結果、他人に煙たがれるようになってしまった少年である主人公海途。そんな日陰者であるだけの一般高校生海途にとある少女の殺しを頼む見社春花という少女。そして殺意を向ける相手にして、同様に殺意を向けてきていると思われる白木九十九。
 基本この三人だけ。まあ短編としては充分な人数ですよね。
 話が短かったから初めから終わりまで展開を書くのも簡単なのですけど、これネタバレ感想でも一応は全部明かしてしまうのは不味いかなと思ったので要点だけ。でも普通にネタバレになるのでもしこの作品に興味を持っていた方は先に作品を読んでからカムバックしてきた方がよろしいかと思います。
 第一話から明かされる衝撃の事実、主人公海途は狂っていた!
 ―――…はい、知ってました!!
 むしろ狂っていない普通の人間が出てきたら、話の内容以前に投稿作者さんの欄をまず見直します。きちんと宮城毒素先生の作品であるのなら、『常識』とか『正常』という言葉が掠りでもする作品は該当しないと思いますので!
 話逸れました。とにかく、どう考えても人殺しはギルティ。当たり前の常識ですね。でも海途君は何故かその話を受けて白木の家へ乗り込みます。理由は単純に好奇心から。すごい行動力だ。学校にも行かず日々を無為に過ごす引き籠りじゃなかったのかお前。
 いきなり縁の切れたと思っていた幼馴染みを訪ねて人殺しの提案をする女も大概頭おかしいと思っていましたけど、乗り込んだ家にいた白木九十九も中々のものでした。リストカットが日課みたいな女の子のイメージ。
 ただ、白木の行動原理というか理念はわからなくもなかったですね。自分はそんな酷いイジメは遭ったことも見たこともありませんが、そんな目に遭えばそれくらい性根が歪むのも有り得ることではあるかなと。
 自分でナイフやカッターを持って殺してやろうというわけでもなく、遠回しに死へ追いやろうとする手を汚さない思考力にも舌を巻くものがあります。意外に冷静というか、やり手な感じしますね白木ちゃん。『沈着☆復讐ちゃん』とかって感じで違う短編に組み込まれても違和感無いわこの子。
 話の全容を知ってもなお揺れもブレも見せない海途はやっぱ心がどこかしら壊れているんでしょうか。まあ海途は実際この一件にはまったく無関係でしたし、他人事だとこんなもんかもしれませんね、海途に限らず。
 対して見社は一番人間らしいキャラクターでありました。かつての罪に苦しんで復讐を恐れている状態、結構追い詰められていたんですね彼女。
 イジメた相手との和解も会話も試みずに安易に無謀な人殺しを思いつくような救いようのない女、という印象が読了後には残ります。正直可哀想とも思わないし、同情の余地は無かったですね。せめて、海途とか他人に頼らず自ら土下座して謝罪に行くくらいの気持ちがあれば、また違った結果にも繋がったでしょうに。
 悪質なイジメを受けたが故に、相手を死に追い込むほどの精神的圧迫を仕掛けた白木の側に正義があったかというとまたそうとも言えませんよね。ただ白木にはそうするだけの理由も動機もあったというだけで、残った結果は見社春花が行った、自殺という『逃げ』。
 鹽竈的には死んで償うなんていうのは思考停止の愚行でしかないと思っているのでこのお話にはちょいと思うところもあります。結局生きて償うことが大事じゃないですかね。死ねばもうそれ以上責められることもなく、辛く苦しいことからも解放されるわけで。やっぱり『逃げ』じゃないかな、と。
 相変わらずなんか、こう、ほんとに考えさせられる話ばかりで。ちょっと宮城毒素先生が心配になってきました。こういった作品を定期的に更新される先生は、一体どういった気持ちでこれらを執筆されているのか、お話して訊いてみたいですね。
 文章に関してはもはや言わずもがな。起承転結もしっかりしているし、作品の内容以外でこれ以上は触れられる部分は少なそうです。…話の内容とか考察だけでもそこそこ長くなってしまうので、これはこれでいいのかもですけど!
 というわけで『それはギルティなのですか?』の感想は終了!お次の作品も短編かな?

       

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