Neetel Inside ベータマガジン
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   「ここではないどこかにて(仮題)」   作者:田中佐藤

   【作品内容】
 感想日の更新としては初になる田中佐藤先生の作品。これは短編なのかな?まだ三話までしか更新されていないけど、いまいち話の内容は未だ把握しづらいです。おかしな悪習のある村でのお話、ですかね。

   【人物】
 主には山上美子の語りが大半で、それ故に大体のキャラクター性が理解できたのもこの美子くらいしか現段階ではおりません。村の生贄?として山神様に捧げられることになっている自らの境遇への怒りや悲しみといった心境を吐露していくところから話は始まります。
 山上家=山神様へ捧げる生贄の家系?ということでしょうか。母親は捧げられていないのに何故か娘は命を差し出さなければならないという不条理。しかも母親は重度のヒステリック持ち。夜桜四重奏でやってた飛び石の儀みたいな感じなのかも?わからない人は読んでみてください、面白いので。
 ともかく家にも親にも恵まれなかった美子は、まあ可哀想なんですけど、家の事情とか村の実態とかが全然明かされていないのでいまひとつ理解が届かなくて同情も及びづらい。先にその辺りの説明を固めて明かした方が良かったかもしれませんね。
 小学校時代に母親のせいで疎遠になった大垣穂積と、彼女を絶賛片想い中の戸ノ内幸治が第三話で登場。二人は失踪癖のある友人守山ヤスを探しに雨の降る中学校の裏山まで赴く。守山お前もしかして犯人じゃねえか?なんのかはわからないけど。
 このクラスメイト達も関わって来るのかどうか、そもそもこの作品がどういったジャンルに該当されるものなのかすらわからないのでここからどう話が展開されていくのかもわからない。故にキャラクターの行動も全然読めない。うーん情報量が少なすぎる…。


   【文章】
 基本は押さえてあると思います。誤字脱字、行頭、句読点、それこそ基本的な部分はしっかりしているので読む分にはなんら問題ありません。
 ただ思ったのは、少し文があやふやというかふわふわした所があるかなということ。そういう作風だと言われればそれまでなんですけどね。なんとなく気になったとこを挙げると、

 第二話より、
『私が大事にしていたくまのぬいぐるみを捨てたのは、きっと母だ』
 ここから数行の後に以下の文が出現します、
『目を見開くと、母が私のくまのぬいぐるみを力づくで引き剥がそうとしていた』

 いや母親で確定じゃないかな捨てたの。
 『きっと』のような、ぼかした表現を些か多用している感があります。その上でそのぼかしを活かしきれていないので、それならば初めから確定した事柄として明示した方がいいと思いました。
 そう感じた部分が他にも複数、田中佐藤先生のこの作品におかれましては文章のそれらの違和感というかもやっとするものが散見されました。


   【ざっくり感想】
 なんだか短編っぽい雰囲気ですが、それにしても一話辺りの密度が薄く三話まで読んでもわからないことだらけです。感想の書き手にとっての最大の敵は文章の稚拙さや展開の突拍子の無さなどではなく、情報量の少なさです。これが多ければ短くてもわかること、疑問に思うことはより多くなります。それは比例して感想の厚みにも繋がると鹽竈は考えています。
 つまり文章量自体の少なさ、さらにその中身に伴う情報量の少なさが両立されると感想を書くことが極めて困難になってしまうのです。こじろう先生、混じるバジル先生らとはまた違った意味で感想に困ってしまうのです。すみません馬鹿にしているわけではありませんよお二方、この感想見てても怒らないでくださいお願いします!
 感想の書き手である自分(鹽竈)と、実際にこの作品を読んだ読者さん達とはほぼ同様のものを感じ入る可能性は高いです。つまり自分が感想に困っているように、読者さんも内容の薄さ情報の少なさに戸惑い、作品への理解を示すのが難しくなるということ。
 更新頻度は人それぞれなのでどうしようもないのですが、頻度をともかくとしても小説の出だしというのは読者を引き込む上で最重要なポイントです。そこから続けて読んでいく上で、小出しにしていく作品の世界観、キャラクターの魅力、意外性のある展開といった情報等を明かしていくことが大事。それをしないで話を続けても更新に付いてきてくれる読者さんは少ないと思います。
 長々と講釈を垂れるのもあまり好きではないので要点を纏めると、三話もあればある程度作品の風呂敷を広げることは可能である、ということです。
 最低限読者の理解が及ぶレベルで人物や世界や設定を広げなければ、内容に不明点の多い文章にいつまでも付き合ってくれる人など限られてきますので。この辺りは、短編と病みっ娘に定評のある宮城毒素先生などがお上手ですね。もし読みに行かれるのでしたら、『常識』と『正常』という単語を脳内辞書から差っ引いてから行かれることをお勧めします。
 今後の展開次第では大いに化けることは可能であると思いますので、ゆっくりでも進めて更新されてください。鹽竈も次出たら読みますので!

       

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