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   「どろまど!」   作者:宮城毒素

   【作品内容】
 刃物を研ぐという変わった趣味を持つ高校二年生の少女のお話。何故彼女が刃物を砥ぐのか、持つのか。それは一体何の為か。相も変わらず完全初見でいきます。
 トップ絵の少女が主人公の娘ですかね、可愛い。


   【物語詳細】

   『とある少女のどろまど』

『 少女は七歳の誕生日に高価なナイフを母親から貰った。
 以来、彼女は刃物に没頭していった。刃物を買い、砥石を買い、暇さえあれば砥ぐことに昼夜を遣い潰す日々。それは周囲の者達から見れば異様でしかなかった。しかし少女は砥ぐことをやめない。曰く、ただの趣味だから。
 そんな彼女は、きたる四月一日…すなわち世に言うエイプリルフールを前にして思うところがあった。
 一年で唯一嘘を吐いていい日に現れる殺人鬼、少女の母親を殺した撲殺タイムと呼ばれる猟奇的な狂人への復讐。
 自分の刃は、それを振るう身は、あるいはこの日に現れる母親の仇を斬り殺す為に砥ぎ磨かれ続けていたのではないか?そんな自身への答えを求め、少女は仇殺しの刃を念入りに選定し始める。』

 母親はどうしてこの子に刃物を渡したのでしょうか?何か狙いがあったのか。そして刃物にドハマりした少女もなんだかおかしい。男の子ならそういうものにカッコよさやロマン的なものを感じるのもわかりますが、女の子ですよね?普通は嫌いそうだけど…。
 この世界はどこか普通じゃない気配があります。エイプリルフールの一日で一年の犯罪件数の半分を占めるとかどうなってんの。怖い、外出れない。
 そして一日に数百人殺しても未だ捕まっていない撲殺タイムなる殺人鬼も化物過ぎる。これ一介の女子高生で太刀打ち出来る相手じゃないよね?
 即座に復讐を思いつく少女にも、どこかした狂気じみたものを感じつつ、一話は終了。


   『とあるマスターのどろまど』

『 男は幸運にも宝くじを当てた。
 大金に群がって来る様々な亡者共を押し退けて、彼は勤めていた会社を辞めるとささやかな願望を現実のものとした。喫茶店の経営である。
 無口ではあるが愛想にはさほど問題のない彼の喫茶店は細々と続けられ、常連も少しずつ出来始めていた。
 しかし理想とする喫茶店との差異に僅か頭を悩ませる彼の店に、とある客がやってきた。
 いやそれは客などではなく、狼のお面を被った上半身裸という異様な出で立ちの大男…血に汚れた金属バットを肩に担ぐ殺人鬼―――撲殺タイムだった。』

 たった一日で全国各地を暴れ回るなんてどんな怪物だよ…と思っていたら、やっぱりそれは一人の犯罪者が行ったものではなく、エイプリルフールという日の奇怪な狂風に当てられた者達の引き起こす騒動…いわば現象の一つだったと。
 人は死を目前にすると生殖の本能が働いて勃起したり濡れたりするらしいですけど、これもそういうことなんですかねマスター?自分の死に感じたりする変態じゃないですよね大丈夫ですよね?
 前回の少女の話から一転、まるで違うお話になったわけですが、もしかしてこれそれぞれ違う主人公にスポットが当たる群像劇みたいな展開になっていくんですかね。となると次のお話も少女やマスターとは違う誰かになる…ということ?


   『とある彼女のどろまど』

『 一人の少女は一人の少年に恋をした。善は急げで告白をしたらば即座に了承を貰い、彼女らはカップルとして成立した。だが、彼女の精神は一目惚れした少年に傾き過ぎていた。
 度の過ぎた行動に少年は別れを切り出し、あまりのショックに少女は立姿で気絶する。
 傷心の少女は町を彷徨い、その途中でバイクに乗った男に声を掛けられる。あっさりと引っ掛かった少女はバイクに跨り遠くの廃工場まで連れて行かれ、そこで異常なまでの悪臭に顔を顰めた。
 その悪臭の根源は、絶命から発される死臭。少女がそれに気付くのは、引き返すことなど到底叶わない段階まで進んでしまってからだった。』

 この世界にはどっかしらネジが一本二本飛んでる人しかいないの?今回のお話の主人公、琴子ちゃんは明らかにヤンデレの素質があります。
 バイクの男は例の『撲殺タイム』に関与している者の一人なのでしょうか?どうも人々が犯罪を起こすことに抵抗の薄い世界のような気がして、しかもそれを当然のように受け入れられたような状況が展開されていることに薄ら寒さを感じています。知っている風景なのにどこか違和感を覚えてしまうような、そんな感じ。
 少しずつ人間関係の繋がりが見えてきたところで、三話も終わり。多分次も違う人がメインで話が展開されるのか、それともある程度主要な人物を出したところでまた少女に戻るのか。


   【人物】
 今のところ、きちんと名前が出ているのは犬飼健志と琴子、狭間灯火くらいかな?あとは刃物好き少女、マスター、『撲殺タイム』の異常者共。その他モブ。
 この名前の有無は関係あるのか。主要メンバーでも名前が明確になっているのといないのがいるのが少し気になる。なんらかの分別が付けられているのですかな。
 ちょっと不気味なほどに偏りのある人達ばかりです。マスターが一番まともかな。
 それぞれが色々な方面から動き出して、おそらく最終的には『撲殺タイム』へと合流するんだとは思いますが、大体が負の感情しか持ち合わせていないのが恐ろしいところ。ネジ飛んだ連中が集まって惨劇にならないことを願います。


   【文章】
 短い文の中でもその人となりがよくわかった。キャラクター性をいち早く理解できるとその後の発言や行動にも違和感なく頷けたりするので、こういうのを長ったらしくしないでさくっと説明できてしまう文才は羨ましい。
 特徴の強いキャラが多く、そこに秘められた感情もよく押し出されている。判断や行動が常人離れして早すぎるのは、やはり彼ら彼女らの異質さ故なのでしょうか。普通思い立ったその日に復讐をしようとは思わないはず…ですし。
 やはりどうにも目についてしまうのは登場人物の常識の無さというか、結構な人数を殺してきた女の子を喫茶店に連れて来て働かせようとする犬飼少年もなんだかおかしいし、そもそもまだ学生なのに社会復帰も何もなくない?


   【ざっくり感想】
 読んでて気になったのは、時系列のこと。多分登場人物皆同じ時間での話じゃないですよね?
 マスターの話では犬飼少年は高校に上がったばかりで一年生のはずだけど、琴子の話では二年生の先輩となっている。この開いた一年はどういうことなんでしょうか。そしてこうなると高校二年生だった刃物好き少女も犬飼少年と同い年かどうかも怪しくなってきます。っていうかこの学生達は同じ学校なのかな?
 たったの一日で一年に起きる犯罪の半分を消化してしまう凄まじい世界。こんなの誰も外出歩けないじゃないですかーやだー!
 でも真面目な話、こんな異常な集団心理に侵される人達もどっかおかしい気がしてならない。もう『撲殺タイム』っていう心因性の病気か何かじゃない?ってレベル。
 今後は因縁のある人達で『撲殺タイム』の根絶にでも挑むんでしょうか。でもキリがなさそう。うーん、主要登場人物がこれだけで済むとは限りませんし、まだなんとも言えないですね。先がいまいち読めない。人物達が合流するの楽しみですね。するよね?(威圧)。

       

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