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   「ねじまきグラフ」   作者:黒兎玖乃

   【作品内容】
 いやはやお久しぶりでございます。かつてこの方には小説の感想を書いて頂いたことが何度もあり、そのおかげで投げずに続けてこれている部分が大きい程です。まさか自分が貴方の作品の感想を書く側になるとは。人生わからんものです。

 『特別』であることに意味を見出しながらも堕落怠惰な生活を続ける高校二年の少年、深山霧島。
 数少ない友人との会話(という名の情報交換?)の中で、彼は自身が求める『特別』に近い何かを持っている少女、『保健室の妖精』の噂を知る。
 
 現時点の内容としてはざっくりこんな感じでしょうか。


   【人物】
 霧島は昔に何かあった感じ?現状に納得しておらず、変わらなければならないという想いに突き動かされ、そうするだけの忌まわしき過去がある…のかな。
 そのわりには作品内で言及されているように、あまり行動を起こそうとはしていないのが気に掛かります。これも理由があるのかどうか。あとたぶんこの子アイシールド21読んでるだろ、あれめちゃくちゃ面白いからここで宣伝しときますね!
 深山の友人二人、健介と千尋も一癖あるキャラ。健介が一度作中で健吾と表記されているけど、頻度から見ても健介で合ってるはず。
 健介は普通に良いヤツそうです、一番青春してるんじゃなかろうかこのスポーツマン。アメフトやってるってことは体付きもがっしりしてるイメージ。ふんぬらばっ!とか言うのかな今後。
 千尋は結構いそうでいないタイプ。しょっちゅう本ばっか読んでるのに社交性あるとかあんまり見ないキャラ性ですよね?女の子だけど、健介や霧島と恋仲になるポジションではなさそう。あくまで友人関係でいそうな。
 やっぱり今のところで一番気になるのは仔猫で妖精な女の子。序章で霧島が会ってるの明らかにこの子だろうけど噂通り忘れているみたい。唐突に名前を訊ねられたのは何故だろう、妖精さんに気に入られたのだとしたら、もう霧島は望んでいた『特別』になってるんじゃないかな。


   【文章】
 この項目で真っ先にこれ挙げるのアレなんですけど、凄く気になったので。
 霧島達の通ってる高校って上郷高校でしたよね?序章の清里高校とは一体…。これ何かのミスリードに繋がってたりするんだろうか……。
 上記のような、気になるんだけれど今一つはっきりした答えが描写されていない部分がわりかし多くて多くてとてもむずむずします。
 視点が霧島の一人称で進んでいくので、捉え方や感じ取り方が諸共霧島のそれを基準に描写されていくのですが、そもそも霧島という人間がちょっと歪に感じます。
 歪んだレンズ越しに見る歪んだ景色はやはり正常な景色と違う部分が多いというか、斜に構えている高校二年生の主観が、正確な情報伝達を阻害しているように読んでて思いました。
 基本的な情報は霧島視点なので彼を中心に語られるものがほとんど、ということで読者側が得られる世界観や人間関係、人物描写などもそれ以上は知ることが出来ません。
 神視点で語られる作品と違い、一人の人間を通して作品世界を把握しなければならないので、どうしても見えるものが狭められてしまうのが一人称視点の難儀なところかなぁと個人的には思いますね。


   【ざっくり感想】
 …………あー、恥ずかしい。
 感想を書いてもらっていた側が、こんな偉そうなこと書くことがここまで精神に来るとは。これまでのもそうですけど、指摘しているポイントは基本的に自らへブーメランでザクザク刺さってるからなぁ…。
 まぁ…今更なんですがね。こういうスタンスというか、臆面がない恥知らずな感想書きに好評を頂いている部分もあるようですし、真摯に読んで感想を書く側としてもお世辞とかおべっかとか使いたくないのも確かなので!なので!
 というわけで、やはり今作品においてもっとも気になったのは主人公・霧島という人間、キャラクターそのものでしょうか。
 『特別』でいないと生きてる実感がしない、とまで言っているわりにはそれらしき行動を取らない。千尋が話題に出した、好奇心くすぐられる特別な少女の噂に対しても、時と場合によりけり、気分じゃない、といった具合に話を蹴ったり。
 致命的に願望に対する積極性が欠けている、と言いましょうか。言葉や心情に実績が伴っていないのが現状なので、どうもこの男は本当に『特別』を求めているのか?という疑問が浮上してきてしまいます。
 このひねた人間性がこの作品でのネックやキーになったりするのかな。とりあえず仔猫みたいにちっちゃい女の子の出番早く見たいです。あだ名は手乗りキャットでいいですか。
 

       

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