Neetel Inside ニートノベル
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イチサン。2-2 真夜中の学園


学園高等部の建物は
月明りを背に黒々と沈黙している。
静かなその校舎にミコは忍び込んでいた。

黒猫アタッチメントを身に着けていると
本当にネコになったようだ。とミコは思う。
視るもの。聴くもの。肌に触れるもの。
それら全てをの猫の世界で感じとり、
思うままにカラダが動く。
悟らること無く
壁となるものも無く。
臆することも無く。
今ここに辿り着いている。

さすがに兄ちゃんの声は届かないな。
ケータイあるし。ま。いいっか。

学園に潜り込むことになった経緯は
胡野まいの証言による。
事件の翌日、礼を言いに彼女は
蒔稲家を訪れる。

先日は歩けなくなったところを
イチロー様に送っていただいて
とても感謝している。
あのとき何があったのかを話しておきたい。

このようなことを言い、事件の話を始めた。
彼女の言葉を要約すると

自分のもとに仮面の男が現れた。
男は「コスプレ頂上決戦」のビラを配り、
何か言いながら傀儡箱を大事そうに渡した。
男は芝居がかってはいたが親切で
礼儀正しかった。
また別れ際に自分のことを「キューリの
しっぽ」と名乗ったということだった。

まいが帰った後、イチローはミコに言う。
高等部にはコスプレ研究会がある。
コス研が傀儡箱を持っていたのはなぜか。
自分の知る限り、彼らは趣味の集まりだ
事件とはどうもつながらないのだが。


屋根裏を走り、打ち合わせどおりコス研へ
向かうミコ。

「兄ちゃんもしれっとした顔で女の子には
甘いんだから。スケベっ。」

かく言う彼女もまいの持参した「めろん堂の
まろやかカボチャぷりん」に参ってしまい、
ほぼ無条件に家に招き入れてしまっていた。
いま思うと恥ずかしい気がする。

コス研の天井裏にはメンテナンスに使う
屋根裏用の入り口がある。

上から押し明けると四角い床が見える。
その小さな四角い穴をするりとくぐり抜け、
音も無く降り立つ。

ロッカーへ駆け寄り開ける。
中にはアイドルのような衣装や極端に布の
小さなビキニのようなもの。
ネコミミなどが目に入る。

あたしのはホンモノなんだなあ。
と、意味もなく誇らしい気分になる。

次のロッカーを開けるとあのときすれ違った
仮面が目に入る。「キューりのしっぽ」だ。


       

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