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イチサン。2-3 真夜中の学園2

「間違いない。この仮面だ。」キューリの
しっぽは実在した。
ロッカーの中へ手を伸ばし衣装を手に取る。
予想していた化学繊維の手触りではなく、
心地よい手触りの素材であることにドキリとする。

「兄ちゃんのつくってくれたものは素晴らしい。
けど。実用性が勝ってるというか。質感は二の次と
いうか。やっぱ女の子だし着るならウキウキしたい。
ええなあこの手触り。くんくん。」

手早く全体に触れてみる。
滑らかな布の感触がやはり気持ちいい。
ポケットは数か所あったが何も入っていない。

ロッカーに目をやるとブーツと古びたスケッチ
ブックが見える。
ブーツを手に取ると革の香りがする。これという
特徴も無いが大切に扱われているように思えた。
中を覗き込み、逆さにして振ってみる。
パラパラと砂が落ちる。

スケッチブックを手に取り、ページをめくってみる。
「おー。スゴイ。」
コスチュームの原画を見て思わず声がでる。
数ページに渡り細々と描き込み、キャラクターその
ものが、この中で成長していったのだろう。
絵だけでなく設定のメモ書きがところどころにある。

「武器 短剣。スピードを活かした接近戦が得意。
職業=盗賊 盗賊だったのか。目立ち過ぎだろ。」

「ミコ、お楽しみのところ悪いんだが。」
イチローの不機嫌な声がする。
「わ。兄ちゃんの声がする。」
「・・ケータイ。持ってるでしょ。定時連絡は?」
「あ。ごめん。いまコス研。キューリのしっぽは
有りました。」
「オッケ。他には?」
「兄ちゃんの好きそうなビキニとか。」
「バカタレ。」
「いま見始めたとこだし、でも、ヘンな感じはない
ですね。」
「わかった。続けてくれ。」

・・兄ちゃん聴いてたのか。どのへんから?
そう思うとちょっと気まずい。
キューリのしっぽのことはもう少し調べておこう。

スケッチブックをめくる。
そこには力強い文字でこうかかれている。



    人は彼をこう呼ぶ。
  天よりの使者。白い狐の化身。
     疾風の九尾



疾風の九尾→しっぷうのきゅうび
→しっぽのキューリ→キューリのしっぽ。
なんだ。そんなことか。そう言われるとキツネを
モチーフにしたコスチュームだとわかる。
キツネというとクグツを連想させてちょっとゾクっ
とする。

コスをロッカーにしまい、テーブルに目をやる。
ビラの束や、ペン立てなどで雑然としている。
だが傀儡箱が無造作に置いてあるということは無い。

それからは引き出し、掃除用具のロッカー、本棚、
目につくところは全て調べたものの、青春を匂わせる
アイテムはあっても黒い呪術を思わせるようなものは
見当たらなかった。(もちろんコスチュームは除く。)

「兄ちゃん。手応え無しです。撤退します。」
「了解。じゃあ手筈どおり。」
「了解。」


天井のメンテナンス用の四角い穴へ駆け昇り
そっとフタを閉じる。


       

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