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イチサン。2-4 真夜中の学園3


天井裏から抜け出し階段前まで走る。
あとは屋上に出てしまえばなんとでもなる。
階段へ跳び上がる。

「おいおい。あわてんなよ。」
男の声にドキリとする。

見上げるとあぐらをかいた人影見える。
窓からの月光を浴びたその影はゆっくりと立ち上がり階段を降り始める。

「天よりの使者。

白い狐の化身。

疾風の、九尾。 参上。

なんちゃって。」

その人影は紛れもなく、疾風の九尾に違いなかった。

「ばかな。」ミコは思わずつぶやく。

「会いたかったんだぜ。オレの黒猫ぶっ壊した
ヤツにさ。ああ。勘違いしないで。べつに怒ってる
わけじゃないから。たださあ。」

九尾が跳びかかってくる。
「ヤってみたくなるよね。」

ミコは九尾を掴み海老反りに受け流し
そのまま後方に階段を転げ落ちる。
九尾を離し、立ち上がる。

「やるなあ。女の子に抱っこされるのはやっぱ
いいモンだ。」
九尾は立ち上がり、ボクシングのように構える。

「好みのタイプなんだよね。できるなら
そのお顔は傷めたくないんだが。」
「ジャブ打ちながら言うことかっ。」
「とか言いながら全部避けるね。」
飛んでくる左ストレートを引き込み後方に投げ
飛ばす。

「おにいさん。タイプじゃないわ。
あたし帰らなきゃなんだけど。門限の時間だし。じゃ。」

ミコは階段に向かって走る。
「兄ちゃん。ヤバイです。ハナシはあとで。」

手すりに立ち、駆け昇る。
九尾はふわり、ふわりと宙を歩くように近づいてくる。
「いや。気に入った。返さないね。」
階下から足を掴まれそのまま階段に叩きつけられ
蹴り落とされる。

「いててて。」
ブリッジして起き上がるミコ。
「やってやる。」拳を打ち出す。右、左、右。
「振りがデカすぎ。」九尾の素早い蹴りが飛んでくる。
下からだとどうにも不利だ。

「ミコ。どうした。」イチローの声だ。
兄ちゃん。と叫びたいところだが九尾に兄の
存在を悟らせるわけにはいかない。
一歩跳び退いて両手で頬をパーンと叩く。
「交戦中」のサインだ。
「3分、いや1分持ちこたえろ。」
2度、舌打ちをして了解を伝える。

「こいよ。キンニク団子。」
「カワイイのにずいぶん言うね。」九尾が駆け寄る。
「来たら逃げるけど。」ミコは回れ右をして猛スピードで走り出す。
「あった。くらえ。」ミコは壁から消火器を外して思いっきり噴射する。

辺りはもうもうとした消火剤で視界が取れない。
そのときけたたましく学園中に警報が鳴り響く。
「ミコ。近くの窓ぶち破って来い。」イチローだ。
ミコはそのとおりにした。
そこにはイチローが車で乗り付けていた。
「よくやった。逃げるぞ。」

       

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