イチサン。3-3 ロッカー。
「この世には、わざわざ開けなくてもいいトビラっ
てあると思わない?」
神楽すずかの目は面白がっている。
「なんてね。開けてみれば。」
ロッカーの取手は開く手応えがあった。
このまま引けばトビラは開くだろう。
「あれ?カギ掛かってない。
どうするかな。本人不在で個人のロッカーを
開けるのも生徒会的には問題アリかな。」
そういってロッカーから手を離した。
「どうします?カギは開いてしまった。
開かないというのは勘違いだったとか。」
「2週間カギの掛かったままのはずのロッカーが今、
開錠されててカンタンに開きそうだ。調査ではあるが
生徒会の権限としてはやり過ぎではないか。
そういうのね?」
「そうですね。僕はこの報告書が完成できれば
それでいいワケです。」
「いいわ。彼には私から伝えておく。」
「ご協力ありがとうございます。」
「盗難や荒らしのもあるかもだし私が確かめるわ。」
でもね。やっぱり、この世には、わざわざ開け
なくてもいいトビラってあると思わない?」