Neetel Inside ニートノベル
表紙

冒険浪漫 イチサン。
黒猫

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イチサン。2-1 黒猫のこと

ミコ、イチローのつくった新装備
黒猫アタッチメントの出来映えに驚く。

ミコ:はじめはどうなるかと思った。
全身タイツにネコミミにシッポだったし
ダサイし。すぐに破るし。

でも、やっぱスゴイ
クグツをこんなふうにつかうなんて。


回想シーン↓↓↓

イチローの作業部屋
学校での事件の翌日

イチロー:そうそう。
8匹はただのクグツ、1匹は違う。
クグツはロボットとかメカみたいなもんだ。
傀儡箱を通じてユーザーと意識を共有する。
クグツにはそれぞれ性質があって
意識を反映した行動をそれぞれの個体が
受け持つ
考えるんじゃなくて、そんなふうに動く。
ってことかな。

で、問題の1匹はより多く意識を消費する。
能力は猫のままなんだけど
センサーがなかなか優秀。それだけでも
めんどうだが、
その上5倍速で処理してる。
ミコがどんなに仕掛けても
猫の目にはスローモーションだったわけ。


相手はクグツの扱いをよく知ってる。
またクグツが使ってくるに違いない。

だいじょうぶ。
対策は考えてある。


回想シーン終わり。


黒猫アタッチメント一覧
 1・猫ミミヘッドセット
 2・キャットアイバイザー
 3・しっぽバランサー
 4・猫アーム&猫レッグ


ミコは心のなかでつぶやく。

暗闇でもよく見える。
カラダだって各段に軽い。
300m離れた兄ちゃんの声だって
ちゃんと届く。


まいちゃんの情報から兄ちゃんが調べて
高等部にコスプレ研究会があることが
分かった。

あのときすれ違った仮面の男が
黒猫事件とかかわりがある。














     

イチサン。2-2 真夜中の学園


学園高等部の建物は
月明りを背に黒々と沈黙している。
静かなその校舎にミコは忍び込んでいた。

黒猫アタッチメントを身に着けていると
本当にネコになったようだ。とミコは思う。
視るもの。聴くもの。肌に触れるもの。
それら全てをの猫の世界で感じとり、
思うままにカラダが動く。
悟らること無く
壁となるものも無く。
臆することも無く。
今ここに辿り着いている。

さすがに兄ちゃんの声は届かないな。
ケータイあるし。ま。いいっか。

学園に潜り込むことになった経緯は
胡野まいの証言による。
事件の翌日、礼を言いに彼女は
蒔稲家を訪れる。

先日は歩けなくなったところを
イチロー様に送っていただいて
とても感謝している。
あのとき何があったのかを話しておきたい。

このようなことを言い、事件の話を始めた。
彼女の言葉を要約すると

自分のもとに仮面の男が現れた。
男は「コスプレ頂上決戦」のビラを配り、
何か言いながら傀儡箱を大事そうに渡した。
男は芝居がかってはいたが親切で
礼儀正しかった。
また別れ際に自分のことを「キューリの
しっぽ」と名乗ったということだった。

まいが帰った後、イチローはミコに言う。
高等部にはコスプレ研究会がある。
コス研が傀儡箱を持っていたのはなぜか。
自分の知る限り、彼らは趣味の集まりだ
事件とはどうもつながらないのだが。


屋根裏を走り、打ち合わせどおりコス研へ
向かうミコ。

「兄ちゃんもしれっとした顔で女の子には
甘いんだから。スケベっ。」

かく言う彼女もまいの持参した「めろん堂の
まろやかカボチャぷりん」に参ってしまい、
ほぼ無条件に家に招き入れてしまっていた。
いま思うと恥ずかしい気がする。

コス研の天井裏にはメンテナンスに使う
屋根裏用の入り口がある。

上から押し明けると四角い床が見える。
その小さな四角い穴をするりとくぐり抜け、
音も無く降り立つ。

ロッカーへ駆け寄り開ける。
中にはアイドルのような衣装や極端に布の
小さなビキニのようなもの。
ネコミミなどが目に入る。

あたしのはホンモノなんだなあ。
と、意味もなく誇らしい気分になる。

次のロッカーを開けるとあのときすれ違った
仮面が目に入る。「キューりのしっぽ」だ。


     

イチサン。2-2 おまけ

ミコ:しかし、どこがキューりのしっぽ
なんだろう。ミドリでも無いし。
ほそながでも無いし。
どっちかというと、赤影とかレインボーマン
だよなあ。


ミコは昭和レトロ好きであった。

     

イチサン。2-3 真夜中の学園2

「間違いない。この仮面だ。」キューリの
しっぽは実在した。
ロッカーの中へ手を伸ばし衣装を手に取る。
予想していた化学繊維の手触りではなく、
心地よい手触りの素材であることにドキリとする。

「兄ちゃんのつくってくれたものは素晴らしい。
けど。実用性が勝ってるというか。質感は二の次と
いうか。やっぱ女の子だし着るならウキウキしたい。
ええなあこの手触り。くんくん。」

手早く全体に触れてみる。
滑らかな布の感触がやはり気持ちいい。
ポケットは数か所あったが何も入っていない。

ロッカーに目をやるとブーツと古びたスケッチ
ブックが見える。
ブーツを手に取ると革の香りがする。これという
特徴も無いが大切に扱われているように思えた。
中を覗き込み、逆さにして振ってみる。
パラパラと砂が落ちる。

スケッチブックを手に取り、ページをめくってみる。
「おー。スゴイ。」
コスチュームの原画を見て思わず声がでる。
数ページに渡り細々と描き込み、キャラクターその
ものが、この中で成長していったのだろう。
絵だけでなく設定のメモ書きがところどころにある。

「武器 短剣。スピードを活かした接近戦が得意。
職業=盗賊 盗賊だったのか。目立ち過ぎだろ。」

「ミコ、お楽しみのところ悪いんだが。」
イチローの不機嫌な声がする。
「わ。兄ちゃんの声がする。」
「・・ケータイ。持ってるでしょ。定時連絡は?」
「あ。ごめん。いまコス研。キューリのしっぽは
有りました。」
「オッケ。他には?」
「兄ちゃんの好きそうなビキニとか。」
「バカタレ。」
「いま見始めたとこだし、でも、ヘンな感じはない
ですね。」
「わかった。続けてくれ。」

・・兄ちゃん聴いてたのか。どのへんから?
そう思うとちょっと気まずい。
キューリのしっぽのことはもう少し調べておこう。

スケッチブックをめくる。
そこには力強い文字でこうかかれている。



    人は彼をこう呼ぶ。
  天よりの使者。白い狐の化身。
     疾風の九尾



疾風の九尾→しっぷうのきゅうび
→しっぽのキューリ→キューリのしっぽ。
なんだ。そんなことか。そう言われるとキツネを
モチーフにしたコスチュームだとわかる。
キツネというとクグツを連想させてちょっとゾクっ
とする。

コスをロッカーにしまい、テーブルに目をやる。
ビラの束や、ペン立てなどで雑然としている。
だが傀儡箱が無造作に置いてあるということは無い。

それからは引き出し、掃除用具のロッカー、本棚、
目につくところは全て調べたものの、青春を匂わせる
アイテムはあっても黒い呪術を思わせるようなものは
見当たらなかった。(もちろんコスチュームは除く。)

「兄ちゃん。手応え無しです。撤退します。」
「了解。じゃあ手筈どおり。」
「了解。」


天井のメンテナンス用の四角い穴へ駆け昇り
そっとフタを閉じる。


     

イチサン。2-4 真夜中の学園3


天井裏から抜け出し階段前まで走る。
あとは屋上に出てしまえばなんとでもなる。
階段へ跳び上がる。

「おいおい。あわてんなよ。」
男の声にドキリとする。

見上げるとあぐらをかいた人影見える。
窓からの月光を浴びたその影はゆっくりと立ち上がり階段を降り始める。

「天よりの使者。

白い狐の化身。

疾風の、九尾。 参上。

なんちゃって。」

その人影は紛れもなく、疾風の九尾に違いなかった。

「ばかな。」ミコは思わずつぶやく。

「会いたかったんだぜ。オレの黒猫ぶっ壊した
ヤツにさ。ああ。勘違いしないで。べつに怒ってる
わけじゃないから。たださあ。」

九尾が跳びかかってくる。
「ヤってみたくなるよね。」

ミコは九尾を掴み海老反りに受け流し
そのまま後方に階段を転げ落ちる。
九尾を離し、立ち上がる。

「やるなあ。女の子に抱っこされるのはやっぱ
いいモンだ。」
九尾は立ち上がり、ボクシングのように構える。

「好みのタイプなんだよね。できるなら
そのお顔は傷めたくないんだが。」
「ジャブ打ちながら言うことかっ。」
「とか言いながら全部避けるね。」
飛んでくる左ストレートを引き込み後方に投げ
飛ばす。

「おにいさん。タイプじゃないわ。
あたし帰らなきゃなんだけど。門限の時間だし。じゃ。」

ミコは階段に向かって走る。
「兄ちゃん。ヤバイです。ハナシはあとで。」

手すりに立ち、駆け昇る。
九尾はふわり、ふわりと宙を歩くように近づいてくる。
「いや。気に入った。返さないね。」
階下から足を掴まれそのまま階段に叩きつけられ
蹴り落とされる。

「いててて。」
ブリッジして起き上がるミコ。
「やってやる。」拳を打ち出す。右、左、右。
「振りがデカすぎ。」九尾の素早い蹴りが飛んでくる。
下からだとどうにも不利だ。

「ミコ。どうした。」イチローの声だ。
兄ちゃん。と叫びたいところだが九尾に兄の
存在を悟らせるわけにはいかない。
一歩跳び退いて両手で頬をパーンと叩く。
「交戦中」のサインだ。
「3分、いや1分持ちこたえろ。」
2度、舌打ちをして了解を伝える。

「こいよ。キンニク団子。」
「カワイイのにずいぶん言うね。」九尾が駆け寄る。
「来たら逃げるけど。」ミコは回れ右をして猛スピードで走り出す。
「あった。くらえ。」ミコは壁から消火器を外して思いっきり噴射する。

辺りはもうもうとした消火剤で視界が取れない。
そのときけたたましく学園中に警報が鳴り響く。
「ミコ。近くの窓ぶち破って来い。」イチローだ。
ミコはそのとおりにした。
そこにはイチローが車で乗り付けていた。
「よくやった。逃げるぞ。」

     

イチサン。2-4 真夜中の学園3


天井裏から抜け出し階段前まで走る。
あとは屋上に出てしまえばなんとでもなる。
階段へ跳び上がる。

「おいおい。あわてんなよ。」
男の声にドキリとする。

見上げるとあぐらをかいた人影見える。
窓からの月光を浴びたその影はゆっくりと立ち上がり階段を降り始める。

「天よりの使者。

白い狐の化身。

疾風の、九尾。 参上。

なんちゃって。」

その人影は紛れもなく、疾風の九尾に違いなかった。

「ばかな。」ミコは思わずつぶやく。

「会いたかったんだぜ。オレの黒猫ぶっ壊した
ヤツにさ。ああ。勘違いしないで。べつに怒ってる
わけじゃないから。たださあ。」

九尾が跳びかかってくる。
「ヤってみたくなるよね。」

ミコは九尾を掴み海老反りに受け流し
そのまま後方に階段を転げ落ちる。
九尾を離し、立ち上がる。

「やるなあ。女の子に抱っこされるのはやっぱ
いいモンだ。」
九尾は立ち上がり、ボクシングのように構える。

「好みのタイプなんだよね。できるなら
そのお顔は傷めたくないんだが。」
「ジャブ打ちながら言うことかっ。」
「とか言いながら全部避けるね。」
飛んでくる左ストレートを引き込み後方に投げ
飛ばす。

「おにいさん。タイプじゃないわ。
あたし帰らなきゃなんだけど。門限の時間だし。じゃ。」

ミコは階段に向かって走る。
「兄ちゃん。ヤバイです。ハナシはあとで。」

手すりに立ち、駆け昇る。
九尾はふわり、ふわりと宙を歩くように近づいてくる。
「いや。気に入った。返さないね。」
階下から足を掴まれそのまま階段に叩きつけられ
蹴り落とされる。

「いててて。」
ブリッジして起き上がるミコ。
「やってやる。」拳を打ち出す。右、左、右。
「振りがデカすぎ。」九尾の素早い蹴りが飛んでくる。
下からだとどうにも不利だ。

「ミコ。どうした。」イチローの声だ。
兄ちゃん。と叫びたいところだが九尾に兄の
存在を悟らせるわけにはいかない。
一歩跳び退いて両手で頬をパーンと叩く。
「交戦中」のサインだ。
「3分、いや1分持ちこたえろ。」
2度、舌打ちをして了解を伝える。

「こいよ。キンニク団子。」
「カワイイのにずいぶん言うね。」九尾が駆け寄る。
「来たら逃げるけど。」ミコは回れ右をして猛スピードで走り出す。
「あった。くらえ。」ミコは壁から消火器を外して思いっきり噴射する。

辺りはもうもうとした消火剤で視界が取れない。
そのときけたたましく学園中に警報が鳴り響く。
「ミコ。近くの窓ぶち破って来い。」イチローだ。
ミコはそのとおりにした。
そこにはイチローが車で乗り付けていた。
「よくやった。逃げるぞ。」

       

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