Neetel Inside ニートノベル
表紙

冒険浪漫 イチサン。
今日もバ・カップル

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イチサン。1-3 今日もバ・カップル


放課後、グランド。陸上部。洗い場。

女子マネ:なる!スゴイ!毎日記録
伸びてる!

なる:いやいや、ただの自己べ更新だから。
まだまだだねー。

と言いながら、なるの顔はカラっと明るい。


女子マネ:でもレギュラー入り決まりだね。

なる:スッキリそういきたいねー。


遠くのほうから声が近づいてくる。

まこと:なるー。スイカ食おうぜ。

なる:まことーっ。

なる、大上に駆け寄る。


女子マネ:カレシでゲスか?ぐふふ。
おジャマしちゃあイケナイでゲスね。


女子マネ、立ち去る。


なると大上、校舎の日陰に入る。
ピッタリと隣り合って座る。


大上:このスイカ。オレがつくったんだ。
きょうハタケで採れたんだぜ
ほれ。あーん。


キレイにひと口大にカットしたスイカを指で
つまみ、なるの口へ運ぶ。


なる、顔を伸ばしスイカを口へ運ぶ。


なる:あーん。はあ。うまっ。うわあ。
あまっ。


大上、しあわせな笑顔。


大上:そっか。もいっこ食べるか?


なる:うん。あぁーん。
あはぁ。うまぁ。
優しい味だなあ。まことみたいだ。
まこと。あーんして
はい。あーん。


大上:んふ。あーん。
・・うまいなあ。
うふう。
なる。あーん。


なる:あーん・・美味し。
あまーい。ああーん。


校舎の影からそれを見つめる視線。
長い黒髪の美少女。
胡野 まい(この まい)


まい:ハレンチよ。ハレンチだわ。大上君。
まいが、まいが、毎日毎日見つめてるのに。
まいは、ニガテなキャベツだって
ニンジンだって大上君のためがんばって
食べてるのに。
もっと、ニガテなスイカだなんて。
ヒドイ。大上君。
まいには見向きもしてくれないのに。
あんな女とデレデレデレデレして。
ちょっと足が早くて、スラっとしてて
カラっとしてて、サワヤカで
ふつうにスイカ食べれる
明るいただの女じゃない。
うっ。うううう。
なんで、なんで、
こんなに見つめてるのに。


まい、うつむく。
なおもひとりごとがつづく。



まい:大上君。大上君。おいでましたら
こちらへお越しください。
まいですら、大上君としか呼んでないのに
「まこと。まこと。」
きいいいいい。
スイカまるごとぶつけてやるうう。
ああっ。大上君そんな。
ハっ。ハンカチで
口元を拭くなんて。
・・まい。もうだめです。


まい、ひとりではあ。はあ。息をしている。
が、呼吸が整ったところですっと立つ。


まい:まいったら。いけませんわ。
大上君のことになったら無我夢中です。


まいの背後から、若い男の声


男の声:苦しそうだけど大丈夫?


まい、くるりと振り返る。
まい、さきほどとは打って変わって
明るい眼差し、穏やかな表情
口元には笑みさえ浮かんでいる。

まい:はい?


そこには奇妙な仮面をつけた男がいた。


仮面の男:・・よかった。顔色もいいし。
大丈夫かな。頼みがあるんだ。

     

イチサン。1-4 同じころ

ミコ、大上を張りたかったが、職員室に呼び出され
ようやくグランドへ来たところ
ミコの成績はあまり良くない。
中の中というところ。

走ってきたところで
若い男の響くような声が耳に入る。

男の声:姫。また会いましょう。

へんな仮面の男が走り去る。

ミコ:なんだあ?

ミコ、男が走ってきたほうを覗き込む。


ミコ:あれ?確か、同じクラスの
胡野まいさん。


まい:あ。蒔稲ミコさん?

まい、ニッコリと笑顔。

ミコ、まいの掌の箱を見つけ驚く

ミコ:傀儡箱!

まい:ああ。先ほど愉快なかたに
プレゼントいただきましたの。

まい、ミコに向けニッコリ笑う。
そのとき傀儡箱のフタが、音もなく
開きはじめる。

箱の口からは奇妙な光があふれ、
その中から、黒い動物の足が伸びている。

まい:あらあら。
ミコ:あっ!

光の中から現れたのは一匹の黒猫だった。
黒猫は床のうえにぴょんと降り立ち、
まいの足元に擦り寄る。

まい:まあ。イリュージョン?


箱の光は収まらず、またも、黒い足が伸び
黒猫がもう一匹現れる。
その黒猫は腕を伝い、まいの肩に乗って
顔を擦り寄せる。

箱が光り黒猫が出てくる。
次々猫が現れまいは9匹の黒猫に囲まれる。



9匹目の黒猫が地面に降りたとき、
1匹がすうっ立ち上がり、二本足で立った。

その猫を中心に他の8匹が集まり
3x3の隊列になった。
みな2足で立っている。

黒猫たちはキチンとまいに向き直る。
まるで機械のように。

そして180度向きを変えてスゴイ勢いで
走り出す。
3x3の隊列には一部の隙もなく
黒い四角形が走っているように見える。
恐ろしくもあるが滑稽に思えた。


黒い四角形の行方にはなると、大上がいる。

ミコ:なる!大上!逃げて!

ミコ、黒猫を追いかける。
途中旗を立てていた棒を引き抜く。

黒猫に追いつき地面をさらうように棒を
振り回す。

黒猫は同時にピョンと跳ね。棒を交わす。
後列の隅の黒猫に棒がヒットしカラカラと
音を立て、転がって行く。すかさず足を
踏みつぶす。

間に合わないと見たミコはもう一段加速し
棒の先を地面に突き群れを低く飛び越し
なる、大上のを背にして黒猫に向かって
構える。

ミコ:まっすぐ逃げて。

なる:わかった。

なる、コシが抜けている大上をおぶって
走り出す。

ミコ、再度一度棒で地面をさらう。
そのまま重心を低くし体ごと回転し、
左足で払う。前の2匹にヒットし、
吹っ飛んでいく。
つま先に当たったほうは胴が割れバラバラに
散らばった。

構えを立て直し
棒を中心部に持ち替えて
正面で回転させる。

距離は稼いだ。隊列に残った猫は6匹
一気に行くか。と思った瞬間

中央の1匹が飛び掛かる。
それを交わし後方に目をやると
残り5匹は散開して別々になる、大上を
追い始める。

まずいと思ったがなぜか5匹の動きは
ギクシャクして大上をおぶっているなるにも
追いつかない。

中央にいた1匹だけがミコに向かって立ち
不気味な雰囲気を漂わせている。

ミコ:行かせないってか?
あれじゃ追いつきもしないよ。
さあ。やろうか。

     

イチサン。 1-5 黒猫


グランドの見える校舎のそば

ミコ、激しく突きの連打。
黒猫は最小限の動きで交わす。
突きが収まるとピタリと動きが止まる。

ミコ:(やっぱり。クグツはクグツだ。
反応してるだけ。期待してソンした。
さっさと片付けよう。)

ミコ、手数を増し、突きの連打を続けるが
まるで当たらない。
黒猫はピョコピョコと器用に交わす。

ミコ:ええい。チョコマカと。

黒猫、棒をつかみ、棒の勢いを利用して
引っ張りこむ

ミコ:わあっ。

ミコ、不意に転倒してしまう。

ミコ:イテテ。ちっくしょ。調子狂うなあ。



一方、なる、大上。

大上、なるにおんぶされている。
振り返って、

大上:あれ?追ってこないぞ。
なる。オレもう大丈夫。

なる、大上を下ろしながら

なる:はあ。重かった

大上:ゴメンゴメン
でもいつ来るかわかんないから
あの植え込みに隠れよう。

身を潜める二人。

なる:うふふ。なんか。
子供のときみたいだ。
ワクワクする。

大上:なるは呑気だな。

なる:あ。ヤバ。静かに。

5匹の黒猫がギクシャクしながら現れる。
ギクシャクした動きのまま、やがて外を
向いた円陣になり、辺りをキョロキョロと
見渡す。

大上、ささやき声でなるに耳打ち。

大上:ぷぷっ。ヘンなの。でもどーしよ。
探しにきたら。

なる:でもさ。弱っちくない?ミコ蹴ったら
壊れてたし。あ、ヤバイ。

黒猫、一斉になる達の隠れた植え込みに向き
直り円陣を崩さないまま走ってくる。

途中1匹が段差に躓いて転倒する。
その1匹はジタバタもがいている。

4匹は立ち止まり、さきほどと同じように
外側を向いてキョロキョロ辺りを探る。
転倒した1匹はギクシャクと立ち上がり、
ギクシャクと4匹の方へ向かい始める。

大上、石を拾い、少し離れた植え込みに
投げ込む。
石は「ガサッ」と音を立て植込みに落ちる。

黒猫、一斉に音のほうへ向き直り先ほどと
同じように走って行く。

大上はケータイを取り出し、なにか操作を
始める。

ケータイの画面をなるに見せる。
ケータイにはこう書かれている。
”こいつら、アタマもワルくね?”

なる、ケータイを取り、操作。
”うん。逃げるのイミ無くない?”

大上、ケータイを操作
”やっちまうか。”

なるは、大上の顔をじっと見つめ
うん。と言うように大きくうなづく。

     

イチサン。 1-6 応戦と応戦


なる、大上。植込みから勢い良く飛び出す。
目指すは黒猫の円陣

黒猫はすぐに向き直り、
二人に向かってくる。

大上、踏みつぶそうとタイミングを合わせ
踏み下ろしたとき

ガシッと受け止められてしまう。

大上:あれ?

と言っている間もなく転倒し、ほかの4匹は
手足、アタマと素早く分かれて、みこしを
担ぐようしてに大上を持って走り出す。


なる:え?え?
わーっ。どこ行くんだよ。

なる、黒猫と大上を追い、走り出す。

なる:まて。コラ。ドロボー猫!

なるが追いかける先にはミコが、一匹の黒猫
と取っ組み合いのケンカをしている。
いや、黒猫は巧みに交わして飛び回っている
のはミコだけ。
黒猫は素早く群れの中に加わる。


なる:ミコー。大上取り返して!

ミコ:おっけ。

素早い足払いで黒猫2匹をを弾き飛ばす。

大上:ゴフッ

黒猫が居なくなったのでアタマから落ち、
引きずられる。

他の2匹が担ぎ直してミコのカラダを踏み
越えていく。

なるが、追いつき、驚いたことに
大上を奪い取り、肩に担ぐ。
スゴイ勢いで走るなる。

黒猫が大上の肩にしがみついているが
構わず振りほどく。
大上、人形のように大きく揺れている。

ミコ:なる。こっわ。

なる、足元にまとわり付く黒猫に難儀してい
たが大上を大きくふりかぶって、、

なる:ミコー!いくよーっ!

ミコ:えええ!?ムリだー。

大上を放り投げた。
ミコ。ドスンと大上を受けとる。
がそのまま転倒。

大上:ゴフッ。



4匹の黒猫はきちんと正方形を作って追い
かけてきて、あっさりと奪い返される。

ミコ、黒猫と大上追う。

黒猫、フェンスへ駆け上り、そのまま走って
行く。

ミコ、フェンスへ飛び乗り黒猫を追う。

フェンスが終わり、コンクリート塀の上を
2つの影が走っていく


黒猫たちは塀を駆け降りる。
ミコ、後を追って塀を飛び降りる
塀と塀のすきまを駆け抜ける
すきまはどんどん狭くなる。



そのとき、黒猫が急に動かなくなる。
そのまま転倒。大上ボロボロ。

ミコ:止まった?

背後から声がする。

イチロー:おーい。ミコ。大丈夫か。

ミコが振り向くと塀と塀のすきまから
イチローが覗きこんでいる。
背後には胡野まいがイチローの顔を
ぼーっと見つめている。

イチローはポケットからなにやら取り出し
ミコに見せる。

ミコ:あ。傀儡箱。

     

イチサン。1-7 日も暮れて

自宅に帰ってきたミコ。
イチローの作業部屋に入ってくる。
ミコ、「面白くない」という顔。

ミコ:ただいま。

イチロー:うん。

ミコ:兄ちゃん。知ってたなら早く来てください。
あたしはタイヘンだったです。

イチロー、黒猫をイジっている。

イチロー:タイヘンそうだったねー。

回想シーン。↓

建物の影

傀儡箱を持って立っている胡野まい。
遠目に大上、なる、ミコ、黒猫の
成り行きをみてオロオロしている。

まいは、大上がボロボロになる様をみて
「あっ。」という表情をする。

箱を取り上げる手。

まい、はっとして振り向く。
イチローがいる。
まい、不意によろめき、地面にペタンと
座り込む。

イチロー、まいに手を差しのべながら

イチロー:驚かせてしまいましたね。

まい、イチローの手を取る。
口が小さく空いている。
イチロー、まいの手を引き上げる
まいは、イチローの手を見つめている
頬が赤い。

イチロー:胡野まいさんですね。
これはあなたの様な娘さんは持ってない
ほうがいい。

これのために、お友達も、あなたも、
傷付くことになりませんか。
そして、その傷はなかなか癒えない。

イチロー 、ほほえみ。見つめ返す。

まい、驚いて目を見開く。頬が真っ赤。

イチロー:大事に至らなくてよかった。
さあ。お友達に謝りにいきませんか。
僕もついて行きます。

まい、小さく「はい。」と返事する。

まいの背中を押して歩き出す。
まいはそれに従う。
イチローの顔を見上げ歩いて行く。

回想シーン終わり

ミコ:なんですか。それ。
あたしホント、タイヘンだったんですよ。
・・・デレデレして。


イチロー:うん?なに?

ミコ:何も言って無いです。


イチロー:「穏便に」いくのはムリかな。
イチロー、手に傀儡箱を持ち上げる

イチロー:傀儡箱。渡してもらえば解決して
たんじゃないの?
制服だってボロボロだし、何着目?


ミコ:・・現場はそういうモンじゃないん
です。

ミコ、顔を赤らめる。

イチロー、ミコに目を向ける。
目元が笑っている

イチロー:言い過ぎたかな。
さて。お茶にしようかね。
まろやかプリン冷蔵庫にあるよ。
食べないのか?

イチロー、席を立つ

ミコ:食べるに決まってます。
・・話し逸らして、、
プリンなんかじゃ誤魔化されないですよ。
まったくもう。

ミコ、イチローの後を追い 、部屋を出ていく。

       

表紙

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Neetsha