Neetel Inside ニートノベル
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睦月が帰る頃には日が沈み、辺りは暗くなっていた。
「……睦月さんは晩御飯一緒に食べないんですか?」
 やたらと三女、香恋に好かれたらしい睦月は、抱きつかれながら満更でもない顔をして答えた。
「ごめんね。家では親がご飯作って待ってるのよ」
「家まで送ろうか」
「いいわ。それよりこの子たちを見てて」
 ちなみに睦月は近所の東条神社の神主の娘だ。たまに家の仕事の手伝いで巫女服を着たりしているらしい。ぜひとも一度見てみたいところだ。
「桐緒」
「ん? なんだよ」
 睦月がくいくいと人差し指でこっちに来いとジェスチャーする。
「……あんた。この娘達に変なことしたら殺すわよ」
「意味わかんないんですけど!?」
 いくらなんでも、こんな幼女に変なことするなんて考えもしませんでしたよ!?
「何かあったらここに電話してね」
「どこまで信用ないんだよ」
 睦月はメイド三人組の携帯電話に自分のアドレスを送信する。
「まあ、あんたがへたれってことはよく知ってるわ。そこだけは信用してる」
「ひどいな……」
 言いたい放題言った後、何やら複雑そうな顔をして睦月はじゃあね、と帰って行った。
「さて俺らも準備して外に晩飯食いにいくか」
「わーいっ。外食外食っ」
「外食なんて久しぶりだわ」
「……桐緒、ご飯作れないの?」
「別に作れないわけじゃないが、今日は面倒だから外食ですまそう。お前らとりあえずそのメイド服着替えてこいよ」
 そう言うと三姉妹は不思議そうに揃って首を傾げた。
「これしかないから着替えられないよっ」
 長女、凛々香のセリフ。
「お前ら……」
 なんてやつらだ。あんなコスプレ一つで着替えも持ってこないとはなんて神経してやがる。
「下着もないのか」
「大変だぁっ! 変態さんがいるよっ」
「香恋、電話しなさい」
「……合点承知の助」
「ちがーう! 変な意味で言ったんじゃないから! 睦月に電話するのはやめろ!」
 こいつらと会話するのは疲れる……。着替えが無いってことはこれから下着だけでも買いに行かないとな。
「はぁ……」
 俺たちは駅前のデパートに向かうことにした。



 その後、予想通りメイド服のおかげで周りから変な目で見られた。当分あのデパートに行けない。結局なけなしの貯金をはたいて、やつらの替えの服一式と、下着を買い与えた。残高を見ると涙が出てくる。
 その日はファミレスで夕食を食べて帰宅した。



……壮絶に騒がしい日々はここから始まった。

       

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