Neetel Inside ニートノベル
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「ありすちゃん! 僕についてきて!」
「うん!」
 つよし君は数えるのが反則的に早い。つよし君が数え始める前にありすちゃんの手を引っ張って、地下駐車場へと走り出す。
 つよし君は足が早い。対して、ありすちゃんは断トツに遅い。
 まともに平地を走れば負けることは明らかであるため、まずは地下駐車場の暗闇に隠れる! これが僕が編み出した定石。車の影が完全な闇に包まれるそこは隠れ家としては極上である。
「いいかい、ありすちゃん。声は出しちゃだめだよ。見つかったら終わりだからね」
「うん」
 つよし君の作戦は解っている。まずはまさお君とさとし君を速攻でタッチして、軍団を作るんだ。それで三人掛かりで僕を捕まえる。いつもそのパターンだ。
「何度も同じ手にかかるか、ごりらが」
「たっくん、しゃべっちゃ、だめー!」
「ごめんね。ありすちゃん」
 その時、静かな地下駐車場に足音が響いた。
「おーい、たっくん。ありすちゃん! どこだい? 僕も一緒に逃げていいかい?」
 これは卑怯者のまさおの声だ。
 仲間に入れてあげようよと言いたげにありすちゃんが僕の手をギュッと握った。
「だめだよ。ありすちゃん。ここはやり過ごすんだ」
「僕はまだ捕まっていないよ。嘘じゃないよ!」
 黙れ! ペテン師め! 純真なありすちゃんは騙せても僕は騙されないぞ。
 その時、ありすちゃんが、影から出ようと立ち上がろうとした。
「ん――っ」
 咄嗟にありすちゃんの口を抑えて、しゃがみ込む。そのまま、動けないようにぎゅっと抱きしめた。
 耳元で囁く。
「だめだって。ありすちゃん僕を信じて?」
 ただでさえも暑い季節に狭い空間で抱きしめているとさらに暑くなってくる。なんだか体が熱くなったのはきっとその所為だ。
 ありすちゃんは激しく首を縦に降った。
 そうこうしているうちにまさお君はどこかへ消えた。当然だ。この場所を知っているのは僕と、つよし君の二人だけなのだから。
「そろそろ移動しよう。つよし君がここに来たら見つかる」
「うん」
 ふふふ。とっておきの隠れ場所があるんだ! 精々探し回っていろ! ゴリラつよしめ!

       

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