Neetel Inside 文芸新都
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キートン山田「その時、山田は夢を見ていた。それはまるで走馬灯のように自分の生涯を思い返していたのだった。」

清水の市民病院で山田は生まれた。
当時の記憶は無い。
ただ、母親の腹を食い破ろうとしていたらしく、緊急帝王切開をすることになったと聞かされた。

山田は物心ついたころから いじめの渦の中心にいた。
幼稚園に入れなかった山田は幼少時、ひとり公園の砂場で遊んでいた。
ある時から、中学生か高校生か、とにかく大人が集まって山田を袋叩きにするようになった。
池沼の幼体はまだ力が弱いので人間の恰好のターゲット。
普段から他の池沼に悩まされていた大人達によって、鉄バットで叩かれたり、やかんのお湯を掛けられたりした。
だが、池沼の中の池沼である山田は死ななかった。

その3才から小学校入学までの3年間、人間に対する途方もない憎悪が山田の脳内で醸成された。
しかし年を取るにつれて池沼度合いが進行、思考力はみるみる内に落ちていった。
幸か不幸か、白痴化したことで人間社会との決定的な対立をせずに、こうして今まで生きてこられた。

キートン山田「だが、その無意味な人生もこれまで。城ケ崎さんを殺してしまったことで山田は危険池沼として処分されようとしている」

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山田「じょ? あで? オイラ、いつの間にか寝ちゃってたのかぃ」

目覚めた山田は真っ黒な空間に居た。
黒い合金ずくめの部屋に寝かされていたのだ。

山田「ヴァハハハハハ!! あっちから人の気配がするんだじょ!」

振り向いた先には不自然に開かれたゲート。
窓一つ無い部屋で、そこからだけ光や風が漏れている。

キートン山田「そう、ここはコロッセオ広場に直通する選手控室なのだ」

目玉を剥き出して鼻息荒く歩を進める山田。
夢で見た屈辱の記憶が山田本来の闘争心を呼び起こしていた。
池沼として生を受けながらも生まれ持った人間並みの知能。
最強池沼トーナメント直前、一匹の池沼山田はいなくなった。

キートン山田「人類滅亡を前提とした狡猾な復讐鬼誕生の瞬間である」

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試合会場――
ゲートのオープンから13分後、ひょこひょこと揺れながら山田が入場する。
待ちに待ち、スマホやケータイを弄っていた頃合いの入場に観客席はどよめきと共に沸いた。

はまじ「ああああ!! で、出てきたぞ! 山田だぁーーーっ!!」
ブー太郎「ブヒィィィイイイイイイ!! ようやく試合が始まるブー!」



『青コーナーッ! 清水の面汚し!! ブサイク!! 息をするゴミ!!!』
『いったい誰がこんなリングネームを登録したぁ!!?』
『身長321cm! 体重880kg! 小学三年生ッ!!!』
『前代未聞の嫌われ者!! 推薦登録参加の山田笑太だぁああああ!!』

アナウンスに続いて四方八方からの大歓声。
会場中心に立った山田は両手を広げグルグルと回転しながら周囲を見回していた。
目は吊り上がって、口角も裂ける程上がっている。
片足で飛び跳ねながらホッピングベイブレードのように回っている。

たまえ「こんな時にふざけてるけど、あれで山田はちゃんと戦えるのかなぁ」
長山「山田君でも低学年くらいの知能はあるはずですから、ある程度状況はわかっているんじゃないでしょうか」
野口「そんなの関係ないね、どうせいつもみたいに暴れて相手に向かってくだけさ・・・」

戸川先生(ちなみに登録手続きをしたのは私です)




山田「くき! くききききき!! とっても都合がいいんだじょ! なんだかわがらないけど、いっぱい人がいるねぇ!!」 

満面の笑みを浮かべた山田が見上げる先には無数の人間。
異様な程透き通ったガラスで何重にも遮られているが、確かに人間がいる。
コロッセオの天井ガラスを破り続ければ届く距離。
天井までの高さ50m。

山田「ヴァハッ!!! みん”な~オイラと一緒に遊んでおきなよ~!」

アラレちゃんのようにキーンと走りながら壁を駆ける。
ガラスを一枚突き破り、山田がコロッセオ上段に突入を始めた。


キートン山田「後半へ続く」

       

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