Neetel Inside ベータマガジン
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セルフインタビュー企画
ゑびす

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 201X年横浜市内某映画館にて、カップル達がぞろぞろと出て来る中に一人恍惚の表情の30代後半の不審な男性がいた。

― お待ちしてました。映画どうでしたか?

「いやあ、良かったですよ。泣きながらおっぱい揉んでるとことか最高でした。
 あと、妹ちゃんの口噛み酒飲みたい。」

この男がゑびす。現在コミックニートにて「竜と戯る星」を連載している。
長年取り組んでいる、キボシリーズの最新作に当る。
 今日は、よせばいいのにカップルがこぞって観に行くと言う、大ヒット中のアニメ映画を一緒に観ながら
インタビューに応じるという話であったが、一緒に映画を観るという件については丁重にお断りさせてもらった。
その代わり、この映画館の近くにある駅ビルの地下のトンカツ屋にてインタビューを行う運びとなった。

「ここのあんかけ唐揚げ丼が絶品なんですよ。量が多いけど。」

確かに、出てきた品を見て、一瞬驚いた。食べきれそうにない。
ゑびすは、細身でありながら、その唐揚げ丼を次々と口に運んで行く。
私も負けじと唐揚げを口にしたら、たしかに美味しい。意外と箸が進む。

― 結構食通ですか?

「いや、そんなこと無いと思いますよ。本当は元々少食だったんですが、最近は食べることも楽しいなって
 思えるようになりましたね。」

ゑびすは食べるペースが案外早く、こちらが唐揚げを数個食べてるうちに、どんぶりの容量は半分を切っていた。

「唐揚げばっかじゃなくてご飯も一緒に食べた方がおいしいですよ。」

― それはどうも。映画はお好きなんですか?

「うーん…特別好きってわけじゃないけど、興味がある映画はなるべく何らかの形で観たいなとは思ってますね。
 今回は、何か今観とかなきゃって気分になって、映画館に足を運びました。数日前に観た『シン・ゴジラ』も
 良かったですね。実写映画はあんまし映画館では観ない方なんですが、思い切って観に行って良かったです。」

― やっぱりアニメがお好きなんでしょうか。

「表現方法にはこだわりとかはありませんね。ていうか、自分の中では、漫画という形式が一番合っていて、
 それ以外の手法の作品は全て同系列と言うか…漫画はたくさん読みますけど、それ以外のジャンルは、
 同列に扱ってる部分がありますね。」

― どんな漫画をお読みになるんでしょうか?

「うーん、ジャンル的には節操は無い感じかな。スポーツものは少ないかな…『五大湖フルバースト』って
 スポーツかな…?」

― どんな漫画なのそれは

「未来のアメリカでは相撲が国技になってて、病気になった力士がサイボーグになって相撲界を滅茶苦茶に…」

― スポーツじゃないなそれは

「だよね、相撲はスポーツという括りでは語れない。」

― そこじゃねえよ。ゑびす先生は漫画オタクということでよろしいので?

「漫画オタクを名乗るからには年間1000タイトル、累計1万タイトルは読んでおかないとなあ。
 そこまでは全然達せてないな。」

― 達する気ですか。冊数では無く?

「いずれはね。冊数に関しては、例えばこち亀とかゴルゴとか、長期連載作品集めてればタイトル少なくても
 達せちゃうじゃないですか。俺としては、出会いを重視したいので。
 だけどやっぱ年間1000はきついわ経済的にも、時間的にも。」

― 読んできた漫画は連載作品に生かせてますか?

「それは読んだ人の判断に委ねたいけどね。自分としては生かすようにはしてますね。
 漫画に限らず、得た知識はなるべく新鮮なうちに出力したいです。」

― パクリとか危険な要素もあるのでは

「そこは気を付ける様にはしてますよ。そういうことに敏感な人は多いと思うし、
 それに、俺自身、既に誰かがやってることを自分がやる意味は無いって考え方だし。
 少なくとも、作品の根幹に関わる部分には、オリジナリティを発揮できるよう心がけています。」

― ゑびす先生と言えば、新都社ではすっかり最古参ですね

「最古参とは言われても、現実ではいつまで経っても若造扱いだし、正直ピンと来てないですね。
 10年て、長い様でいて実際はあっという間ですよ。」

― そうは言っても、そこまでやってる人はそういないですよ。長く続ける秘訣とかあります?

「長く続けるとか言っても、実際は数年で終る連載をチョコチョコ続けてるだけだから、
 そんな意識あんまし無いんだよな。漫画読みのスタイルと同様にタイトル数重視してる感じかな。」

― だけど、長く描き続けてる事に違いは無いじゃないですか。飽きたりはしませんか?

「いや、もう最初の頃から飽きてるんですよ。新都社来て1年くらいとかその段階で。」

― そうなんですか?ノリノリで描いてる様に見えますけど

「ノリノリで描かないと本当に描かなくなっちゃいそうだから。
 筆を止めないために、次から次へとアイデアをブチ込んで自分で自分をワクワクさせたり、
 否定的なコメにあえて目を通して奮起したり、
 『今日自分が死んだらもうこの漫画は続かないんだな』って自分に言い聞かせて、
 無理やりモチベーション保ってますよ。」

― ものすごい意外ですね

「そう?まあ、もっとも、今に至っては、漫画描かなきゃただのグータラオジサンですからね。
 職場の人は俺が漫画描いてるなんて知らないから本当のグータラオジサンと思ってるかも。
 漫画描かないでいたら何やっていいかわかんないですよ。」

― その分読む方に回すとか…

「それはどうだろうね。元々、読者として『描き手にならねばわからないこともある』って考えで描き始めた
 部分もあるし、描き手としての真髄を理解できたとは全く言えないし。
 全ては、読む描くないまぜにした謂わば『漫画道』の一環で始めたので、
 それでやめるわけにはいかないって部分もあるんですよ。」

― 根っからの漫画好きですね

「ていうか、さっき上げた理由で数読めないから、その分を埋めるために、描く側に回ってるんですよ。
 実際、描き始めたことでわかったことも多い。
 漫画を描くには色んな事を知らなければならない。
 読んでるだけの頃は、作者の知識不足とかそういうのが目についたこともあったけど、
 実際に描くとなると、生半可な知識量では間に合わない。その中で取りこぼしも出て来る。
 そういうのがわかる。
 一方で、知識の無さを埋め合わせるために、ハッタリをかますことも覚えました。
 そういうのがわかると、漫画の読み方もまた変わってくる。
 新都社の話になりますけど、 画力についてうんぬん言う人が多くて、絵の練習が必須とか言うけど、
 綿密な取材や情報収集だって漫画を描くには絶対必要な要素なわけで、
 仕事や学校の勉強に追われてる人がアマチュアとして漫画を描くには、どちらかの要素は捨てなきゃならない。
 下手に両方追いかければ、どちらも中途半端なものになってしまうと思います。
 逆にどちら追わず、孤高の作品作っちゃった人もいますけどね。」

― 映画の感想がおっぱいと妹だった人とは思えない

「エロは大事。」

― そのエロがらみでトラブルあったんでは?

「それはオフレコでね。」

― …まあ、いいや。では、今後の活動予定とかどうなってます?

「そうですね、今回の連載ももう1年ですか。半分くらい行ったので、
 もう1年くらいお付き合いおねがいします。
 その後、間髪入れずにキボシリーズ4作目予定してます。」

― 今までは間に別作品入れてましたよね

「さすがに、間に別作品入れる余裕とか考えられなくなってきました。
 短い連載をちょくちょくとか言っておきながら何気に年単位の時間が過ぎちゃうんですから。
 一応、短期連載用のアイデアとかもあるんですが、ちょっと発表の機会が無いですね…」

― 残念な様な、キボシリーズが続けて読めて嬉しい様な。何はともあれ、本日はありがとうございました。

「こちらこそ。今度は一緒に映画観ましょう。」

― 恋愛もの以外でお願いします。

       

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