Neetel Inside ニートノベル
表紙

早乙女薫はモテない
JKとミスド

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 早乙女薫は中背、小顔で鼻筋の通った、黒髪ショートの美少女である。
 だがモテない。なぜだろうか?

 感情が希薄そうかもしれない。あまり表情が動かない。
 ワーキャー騒ぐ女子高生の中でぽつねんと突っ立っている。
 自撮りが嫌いである。女友達にカメラを構えられると、すいーっと逃げていく。
 何となくグループに入れてもらえてはいない。
 が、いじめられることがないのは、彼女の一筋縄でいかなさそうな雰囲気のせいであろうか。
 一つには気が強そうである。
 二つには、運動神経がいい。
 三つ目に、大して授業も聞いていないしノートも取らないのに、成績がいい。
 しかし、モテない。

 そんな薫にも、唯一と言っていい友達がいる。
 ゆかりである。金髪、チャラい。だが非常に面倒見がいい。
 薫が干されつつも体面を保っているのは彼女のおかげといっていい。
 彼女も顔立ちは整っているが、美少女というほどでもない。
 中の上程度、どちらかといえば愛想のよさで人に好かれるタイプである。
 薫が終始ツンツンしている(表面上の変化はないが)のに対し、常にデレである。
 なぜ彼女が薫にちょっかいを掛け続けるのか。
 それは彼女の困った人を放っておけない性格のせいだろう。
 彼女から見れば、薫も現状を前に困惑する一人の乙女なのである。
 別にレズっ気があるわけじゃない。男子にも世話を焼く。

 さて、ある休日。ミスドに来た二人は、何かについて相談をしていた。
「薫。まずそれ。何でチョコレートよ」
「何でって…安いし美味しいじゃん」
 ゆかりは大げさにため息をつく。
「可愛げがないよー。そこはフリフリのエンゼルフレンチとかだよ」
「ほんとに?でも私はシンプルなのがいいなあ」
「うーん、ならポンデ系で妥協。」
「ポンデって美味しいけど、何か騙された気がするのは私だけ?」
「言わんとしていることはわかる」
薫はもそもそとチョコレートを食べる。確かに可愛げはないかもしれない。
「でもさ、可愛げがあることをすればモテるわけ?」
「うーん、あざとさ。あざとさに分類されるなそれは」
「あざとければモテる?」
「可愛ければね。薫の見た目ならOKでしょ。ただキャラが合わないかなあ」
「キャラ?」
「うん。いや、薫はクールだから、ギャップ萌えってことでありなのかな」
「萌え?」
「言葉の綾だよ。別にオタクくんの話をしてるわけじゃない。まあそういうのもありかな?
 薫、明日からメイド服で登校してよ」
「制服あるじゃん」
「その返答、10点」
ゆかりは低い姿勢から薫のおでこにデコピンする。
「いたい」

「というか,
どうして急にモテの話を?」
んーと、と薫は頬杖をつく。
「何となく…かなあ」
「何となくなわけないでしょう。最近始めたバイトのせい?」
「そうかも。上司のお姉さんが綺麗な人で、その人が社長に心酔してて」
「ほう」
「何となくその関係を見ていて、羨ましいというか。私も何かに心酔したいなあと」
「モテ、関係あるか?」
「お姉さんも社長もモテそうだったのよ」
お~、お~…。ゆかりは腕組みをして、深く頷く。2回。
「それは進歩だ。モテる人がどんな人なのか?わかっちゃえば早いよ」
「でもさ、さっきゆかりが言ったみたいな、あざとさは無かったよ。ギャップもなかった」
「うん。そうだな、まだ聞いてないからわからないけど、その2人は仕事が出来る感じ?」
「お姉さんはそうだな。海外の会社でバリバリ働いてたみたいだし。キャリアウーマン?ってやつかな」
「ふんふん。で、社長は」
「わからない。最初見たとき運転手だったせいかなあ。人生について語るのが好きそうだった」
「何か語られたの?」
「うん。先の事はわからないぜみたいなこと」
「ざっくりだなあ」
「ね。だからちょっと胡散臭いなあと思った」
「でも美人のお姉さんに心酔されてる」
「うん。けどね、確かに凄そうな人だけど、あのキビキビしたお姉さんを惚れさすほどのもんなのかなと」
「それがモテに起因してると想像したわけね?」
「あ、そういうことか」
「ん?」
「私の考えてることを私以上に把握してる」
「えっへん。私を誰だと思っている」
ゆかりは偉そうに腰に手をやっていばる。

「で」
「で?」薫は首をかしげる。
「薫はモテたい?」
「…」
真剣な表情で何かを考えている。
また首をかしげる。
「わからない。別にモテなくてもいいかもしれない。でもモテが何なのかは知りたい」
「好奇心は猫をも殺すってね」
「今猫関係ある?」
「ことわざみたいなもんだよ」
「そっか。殺されちゃうのかあ」
「ま、それは置いといて。モテについて知るには、モテるのが一番でしょ」
「どうしたらモテますか?」
「私についてきんさい」
「ははーっ」薫はひれ伏した。
ゆかりは満足そうににんまりしている。
「じゃ、明日から薫モテモテ作戦でも始めますか」
「明日からで大丈夫?」
「生徒の癖に生意気だな。じゃあ今日だ!今日から始めっぞ!」
「何する?何すればいい?」
「うーむ」
ゆかりが腕を組む。

「自撮りすっぞ」
「は?」
薫は真顔である。
「はい、ピースピース」
ゆかりは高々とスマホを掲げ、インカメを起動する。
苦虫を噛み潰したような顔をした薫と、ぴかぴか笑顔のゆかりが画面に収まっていた。

       

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