Neetel Inside ニートノベル
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 盗賊団を掃討した功績を認められ、俺は冒険者ギルドからSランクの称号と金一封を貰った。

 そろそろ次の街に行く頃合いか、そう思った俺は、盗賊団が乗ってきた馬車で移動することにした。
 
 馬車の中には方々で略奪したと思われる食料品や様々な雑貨、装備品がたくさん積まれている。丁度いい、戦利品としていただくことにするか。
 「これだけあれば当分困らないな」
 そう言いながら薄暗い馬車内を見渡すと、何かがごそごそと動いている気配に気づいた。

 しまった!残党がまだ生き残っていたか!
 俺は咄嗟に魔法詠唱の準備に入ったが、そこにいたのは怯える一人の少女だった。

 薄汚れた服を着た幼女で、腰まで伸びた金髪に碧眼、よく見ると耳の先端がとがっている。俺はすぐにこの少女がエルフだと理解した。

「・・・・・助けて・・・・・もう、酷いことしないで……」
 
 大丈夫酷いことなんてしたいよ。
 違った、しないよ。

 おそらく盗賊団に奴隷として売られるために捕まったのだろう。

「だ、大丈夫、も、もう悪いやつはいないよ」
 俺はそう優しく声をかけるとエルフの少女はにっこりと微笑んだ。なんか引きつった笑いのような気もするけどたぶん気のせいだ。

 そういえば女の子とまともに話したのなんて小学校以来か……これで俺もリア充……いや異世界充だ。

 しかし不思議だ、エルフだからなのかが、お尻がウンコ臭くないのだ。
 ここに来て初めてかもしれない、ウンコ臭くない人に出会ったのは……

 俺は喜び勇んで馬車を発信させようとしたが、問題が一つあった。
 
 俺は馬車の運転なんてしたことがなかった。

 「そうだ、あの手があったか」
 
 閃いた。
 
 俺は馬を馬車から解放すると、馬車の後ろに座り詠唱を始めた。

 
 「ウォシュレット!」

 俺はウォシュレットを馬車の進行方向と逆向きに噴射させた。

 するとゆっくりと馬車は前に進み、水圧が増すに比例して馬車の速度も加速していった。
 途中で通行人がうっかり水流に触れて真っ二つになった。

 何回かの休憩を取りながら夜になる前に次の街についた。

  そういえば幼女の名前を聞いてなかった。

 「き、君、な、なな名前は?」

 「ルナ」

 ルナか、いい名前だ。

 
 俺は迷子にならないようにルナの手を握って街の中を歩いていく。

 現実世界だったら事案案件だが、この世界では誰も俺たちの様子を気にも留めようともしていない。
 ここでは幼女エルフの奴隷はごく当たり前の存在なのだろうか?
 もしかしたら街の憲兵に児童誘拐の濡れ衣を着せられてしょっ引かれてしまうかと危惧していたが、それも杞憂だったようだ。
 

 俺達は宿屋で宿をとることにした。

 受付でステータスカードを提示させると
 「冒険者一名様ですね、50ペニスになります」

 ペニスとはこの世界の通貨単位の事だ。
 1ペニス=約100円の価値がある。
 
 それにしても妙な事を言う、冒険者一名様だと?まさかルナの存在に気づいていないのか?

 いや、たぶんルナの事を俺が所有している奴隷だと勘違いしているのだろう。
 奴隷は物扱いってことか……ルナは俺の奴隷なんかではないことを受付に言ってやりたかったが、まあ宿代が浮くからここは黙っておこう。

 その後俺とルナは部屋へと案内された。
 
 部屋はこじんまりとしていて質素な作りだが、旅の疲れを癒すには十分だろう。

 その後夕食が運ばれてきたのだが、やはり食事も一人分しかなく、仕方なく俺はルナと分け合って食べた。

 食事をしたら眠くなってきた。ルナもいつの間にか俺の横で寝息を立てている。
 明日は何をしようか……そうだルナに新しい服を買ってやろう、そしてルナの故郷を探そう。
 
 魔王退治はそのあとでもいいか。

       

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