Neetel Inside ニートノベル
表紙

奇跡のアイランド
第二話

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 島の日常

 家に帰って寝る。もう時間は夜の10時だ。祭りとはいえ、早く帰りたい。
 渉達四人は並んで家路につく。
 四人は同じ家で暮らしていた。

 渉の部屋。
  誰かと無駄な会話をしたい。そんな気分に上妻渉はなっていた。中身のない無駄な会話をしたかった。無用の用という言葉があるように、無用の時間つぶしのようなことをしたかった。生来ののんびり屋である渉。
 控えめなノック。誰だろう?

「うん。どうぞ。」

 瞑想し、あるこの島特有の文化的行動をしていた渉は意識をこの場所に戻した。

「入るね。」

 未来だった。
 お風呂から上がりパジャマに着替えた未来。入ってきた未来はカーペットの上に座った。二階の部屋の窓の大きな渉の部屋。

「渉何してたの?」

「瞑想。」

「私もここでやっていい?」

「うん。」

 二人は斜めに向かい合うようにして座った。渉が立ち上がり、部屋の灯りを落とす為に為に紐を引く。
 部屋から灯りが消え、丸い天窓から月光が差し込む。

「満月は霊力が増す。」

 渉が呟いた。
 精霊との対話。ここなどの特に神佑地でもない場所では微精霊としか交信することはできないが、それで十分だった。精霊との交信、即ち対話をしていると、渉はだんだん眠くなってきた。毎日この家の周辺との微精霊と会話をしているので、もはや価値観の相克などで疲れることはない。この家の微精霊は渉のことを知っていた。渉も微精霊のことを知っていた。未来も同様だった。
 二人は精霊を通して心の通信をしていた。
 お祭りではしゃいでいた二人はベットを背にして、持たてかかるようにして眠ってしまった。
 先に眠りについたのは渉だった。未来もまた、明日になんの不安も抱かずに眠った。
 明日も、楽しい日になるだろう。二人は明日起こることが楽しみだった。明日はどんなワクワクすることが起こるのだろうという期待を疑うことは無かった。

 無邪気な小鳥のように体を寄せあって眠った・・・

 朝の支度。まずまず。みんながそれぞれに起きてきて、席に着いた。みんなそれぞれに個性がある。しかし、こうして食卓につくとそれなりに圧巻だ。何たって我が家は家族が多すぎる。彼も彼女も俺の作った朝ごはんを食べる。もちろん、アリーシャも、未来も咲夜も。その事に微かな満足感を覚えた渉。

 朝の時間が終わる。さて、今日は何をしよう?

 友達の家に行くか。
 山あいにある、森に囲まれたお屋敷。その屋敷の主はもちろん渉を受け入れた。もう、フリーパスのようなものだった。渉がこの屋敷にいる人に挨拶をする。渉から挨拶しなくても、向こうから渉に朗らかに、快活に、声をかけたりしてくれる。お菓子をくれたり、天気の話をしたりした。しかし、彼らはどうしてこんなに俺に親切にしてくれるんだろう。なんだか、怖い。
 お日様はいい気分だ。縁側にいるのが心地いい。
 その後榛原じいさんの話を聞いてから帰った。帰り道は一緒にその話を聞いていた美優達とおしゃべりしながら帰った。
 晩御飯が迎えてくれた。お腹いっぱい食べたらお腹だけじゃなくて心まで満たされた。大丈夫かな?
 それにしても、みんなで食卓を囲むっていいな。
 食べ終わった人で巨大サイコロをやりたいやつーっと誰かが言っていたので、急いで食べた。

「急いで食べてね。でも味わって食べるのよ。」

 これは美優だ。はい、分かりました。皆しっかり急ぎつつ、味わって食べている。
 渉も味わって食べた。本当においしい。美優。ありがとう。今言わないところが渉らしいけど。
 展開した巨大サイコロは楽しくて楽しくて三時間ぐらいやってしまった。二回目をやろうとしたが、賢明な判断を下せるやつによってそれは無くなった。早く寝なきゃね。
 渉は精霊と交信しながら寝た。こうすると穏やかに安らかに眠りに入れるし、深い眠りにつくこともできた。渉の他に同じようにまだやっている子がいることは渉は知っていた。
 誰かに頼ってばっかじゃ駄目だ。渉はそう自分に言い聞かせた。
 明日もきっといい日だ。誰かがそう言った。きっとね。
 穏やかに、月並みだけどこの幸せがずっと続きますようにと渉は祈った。精霊たちはやはりたゆたっている。
 アリーシャが渉の頭を撫でていた。これも夢か。だってアリーシャは違う部屋で寝ているはずだもの。一枚のかけ布団の下にアリーシャ、咲夜、渉、未来の順番で横になって寝ている。なんだこれ。ちょっと照れるし、恥ずかしいな。でも心地いいし、悪くないかも。アリーシャがさっきから俺の頭を撫でていてくれるから。渉はあんまり安らかにいられたのですぐに眠ってしまった。
 起きた時ベットには渉ひとりしかいなかった。と思ったらちょこんと咲夜がいた。寝顔超可愛い。昔抱いていたぬいぐるみのかわりなのか、渉を抱きしめている。

「まいったな。起きられない。」

「渉。渉。朝だぞ。」

 そう言ってドアから入ってきた春日井によって二人は起きることが出来た。ぎゅーっと渉を抱きしめているお姫様は起きてから、眠気まなこで渉に抱きついてから、ずるずるとまたベットに落ちた。渉と春日井は顔を見合わせて苦笑した。

 その日渉と春日井は二人で島内を散策、もとい散歩した。二人で作った男の弁当持参。その弁当に何をいれるかとか、どこを探検するかとか春日井と喋ってる間はかなり楽しかった。美優。ごめんな。春日井を今日奪っちまって。このよく出来た、できすぎなカップルはたまに一緒にいて後ろめたいような、そんな罪悪感を覚えることがある。それは春秋に言ったら、春秋もかなり感じていたらしい。春秋は俺よりもそういうことを覚えてそうだった。でも春日井と美優のそんなところが渉は大好きだった。

       

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