Neetel Inside ニートノベル
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考えなければいけないことが山ほどあるのに、考える材料どれも断片的すぎて、俺の頭のなかでは、何一つうまくまとまらない。そんなジレンマが、俺をモヤモヤさせる。学校帰り、俺は通学路の川岸の土手から河原に降りていって、河原で石を拾った。川に向かって石を投げはじめた。川面で石を何回バウンドさせられるか、昔、兄貴とここで競ったこともあったっけ……。
ミチからもらった力があっても、石投げは力の強さは関係ない。もっと繊細なコントロールの問題だ。それに気付いた。俺は夢中になって石を投げ続けた……。
「おい! 勇人!」
土手の上の方から、声がした。振り返ると、兄貴がスーツ姿で立っていた。兄貴はゆっくりと土手の階段を下りてきた。休暇で帰ってきたはずの兄貴は、なぜかスーツ姿で日中何処へ行くとも告げず、どこかへ出かけ、5時過ぎに家に帰って来る。
「どうしたんだよ、こんなところで……」
「兄ちゃんこそ、休暇なのに、¥スーツで毎日どこ行ってんだよ?」
「おっ? 質問に質問で返して来るとは、ちょこざいな」
兄貴は笑ったが、俺の質問に答える気はなさそうだった。俺はまた、石を拾って川に投げた。
3回バウンドした。
兄貴も石を拾って石を投げた。……4回バウンドした。
「どうだ!」
「石投げ如きで、8歳年下の弟にドヤ顔する兄貴ってどうよ!」
俺は、悔し紛れに言った。
「17も25も、実は大して中身は変わりないのよ、人間」
「じゃ、大人になるって、どういうこと……?」
兄貴はちょっと考えるように、手に取った石を見た。
「……世の中は知らないことだらけだってことに、気付くことかな?」
「えっ? ……どういうこと?」
「わかったような気になって見ていた世界は、実は小さな卵の殻の中でしかなかったってことに気付いていくのが、大人になるってことじゃねーか?」
「なんだそれ?」
「柔軟でいろ、なるべく。……ぽっきり折れないように、柔軟でいろ」
「……兄ちゃん、なんかあったの?」
「この世界は……ワンダーランドだぜ」
兄貴は、俺の顔を見てニッと笑った。兄貴の言うことが俺も少しわかる気がした。ミチと出会ってからの一連の出来事は、俺の世界観を嫌でも壊そうとしているのだから……。

       

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