「私は、高木沙織という魔法少女と一緒に戦っていました」
「あぁ、沙織ね。知っているわ、確か鏡を使った能力を扱うはず」
「そうです。私たちはある絶望少女を追跡していたんです、それは数日前に近くに住んでいた仲間が取り逃がした奴でして、話を聞く限りではそこまで強くなさそうだったんです。なので、二人だけで行ったのです」
「それで?」
「その結果、惨敗でした」
「珍しいわね……彼女、一流の魔法少女じゃなかったかしら」
「それが……絶望少女が強すぎて話にならなかったんです」
「……それまたどうして……?」
「攻撃が通用しなかったんです」
「どういう意味?」
フレイヤはそこに食いついた。
その絶望少女の能力が分かれば、戦闘を優位に行うことができる。一番知りたい情報だった。
しかし、咲夜が話したことは、全員の期待を裏切るものだった。
顔をしかめて首をフルフルと振って言葉を紡ぎだす。
「それが……分からないんです」
「分からないって……どういうこと?」
フレイヤが代表してそう尋ねる。
すると、咲夜は顔をうつむかせたまま答える。
「本当に、分からないんです……あの絶望少女はこちらの攻撃が当たらなかったんです」
「それはシールドでも張っているということ?」
「いいえ。攻撃が消えたんだです、文字通り。そのために当たらなかったんです」
「それは不思議な話ね」
「しかも、それだけじゃなかったんです」
「……それって?」
咲夜は顔を上げると一番不吉な情報を告げた。
「成長速度が異常なんです」
「異常って……どういうこと?」
「私たちが逃がした時はそこまで強力ではなかったんです。ところが、一週間も経たないうちに沙織さんが殺されるぐらいに強くなったのです」
「それは不思議な話ね、どれぐらいの人間を食ったのかしら?」
「いいえ、彼女はすぐに山の方に逃げたので、そう簡単に成長することができないはずだったんです」
「不思議な話ね……」
「そうなんです」
ここで話が途切れる。