Neetel Inside ニートノベル
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魔法少女 The Side story
史上最悪の絶望少女戦―訪問 その②

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 そんなこんなしているうちに、二人はアパートに到着する。
 フレイヤが住んでいるはずの部屋の扉の前に立ち、呼び鈴を押そうとする。だが、そこで久美の動きがぴたりと止まってしまう。どうしてかわからずいぶかしげな顔をする詩音だが、すぐに察する。
 扉越しに聞き覚えのない声がするのだ。


 何かを話しているらしく、三人の声が順々に聞えてくる。
 少し躊躇したが、このまま立ちっぱなしではしょうがない。
 意を決すると久美は指を押し込んだ。
 するとピンポーンという軽快な音がなるのが分かった。同時に「少し待ってね」というフレイヤの声が聞こえてくる。すぐに扉が開き、いつも通りの顔が覗く。


 「あら、思いのほか早かったわね」
 「二人もぉ、こっちに来たらぁ?」
 「じゃあお言葉に甘えさせていただきます」
 「おう、お邪魔するぜ」


 そう言って二人は室内に入る。
 すると、部屋の中央に敷かれた布団の上で座り込んでいる一人の少女の姿が目に飛び込んできた。咲夜である。彼女は麗装を解除しており、Tシャツにジーパンというラフな格好をしていた。
 まるで泣きはらしたかのように目が真っ赤で、必死の形相をしていたが二人の姿を見ると少しだけ表情を和らげる。
 そして、ジッとにらみながら訪ねた。


 「あなた方は誰ですか?」
 「あら、あなたも魔法少女?」
 「……そうですけど」
 「私は安藤久美よ、よろしくね。こちらは同じく東雲詩音」
 「うッス」
 「あなたが、フレイヤさんの弟子の……。私は銀麗咲夜といいます」
 「よろしくね」


 二人はギュッと握手を交わした。
 詩音は自分もするべきかどうか悩むが、どうやら咲夜は久美以外に興味ないらしく、すぐに顔を背けるとフレイヤの方を向く。
 その態度に何となくムッとしてしまう。それを察した彩芽はこっそりと詩音の後ろに回ると、小さな声で呟いた。


 「残念ねぇ」
 「うッさい!!」


 怒って肩を小突く詩音、それに対して「何すんのよぉ」と言って反撃する彩芽その姿は仲睦まじく見えた。バカみたいなやり取りをしている二人をそっちのけに、フレイヤと久美は咲夜の前に座り話を聞く。
 実は咲夜はフレイヤに向かって叫んだ瞬間に気絶してしまい、すぐに起きた物の、さっきまで介抱していたのだ。
 そのため、話がこれっぽちも進んでいなかったのだ。
 二人が来たのはある意味ちょうどよかった。


 「久美、話を聞きましょう」
 「えーと、何の話ですか?」
 「それは私が説明します!!」


 そう言って咲夜は身を乗り出す。
 詩音と彩芽もその声で正気に戻ると、一斉に顔をそちらに向ける。
 シン、と部屋が静かになる。その中で、咲夜と弱々しい声が流れていく。


     



 「私は、高木沙織という魔法少女と一緒に戦っていました」
 「あぁ、沙織ね。知っているわ、確か鏡を使った能力を扱うはず」
 「そうです。私たちはある絶望少女を追跡していたんです、それは数日前に近くに住んでいた仲間が取り逃がした奴でして、話を聞く限りではそこまで強くなさそうだったんです。なので、二人だけで行ったのです」
 「それで?」
 「その結果、惨敗でした」
 「珍しいわね……彼女、一流の魔法少女じゃなかったかしら」
 「それが……絶望少女が強すぎて話にならなかったんです」
 「……それまたどうして……?」
 「攻撃が通用しなかったんです」
 「どういう意味?」


 フレイヤはそこに食いついた。
 その絶望少女の能力が分かれば、戦闘を優位に行うことができる。一番知りたい情報だった。
 しかし、咲夜が話したことは、全員の期待を裏切るものだった。
 顔をしかめて首をフルフルと振って言葉を紡ぎだす。


 「それが……分からないんです」
 「分からないって……どういうこと?」


 フレイヤが代表してそう尋ねる。
 すると、咲夜は顔をうつむかせたまま答える。


 「本当に、分からないんです……あの絶望少女はこちらの攻撃が当たらなかったんです」
 「それはシールドでも張っているということ?」
 「いいえ。攻撃が消えたんだです、文字通り。そのために当たらなかったんです」
 「それは不思議な話ね」
 「しかも、それだけじゃなかったんです」
 「……それって?」


 咲夜は顔を上げると一番不吉な情報を告げた。


 「成長速度が異常なんです」
 「異常って……どういうこと?」
 「私たちが逃がした時はそこまで強力ではなかったんです。ところが、一週間も経たないうちに沙織さんが殺されるぐらいに強くなったのです」
 「それは不思議な話ね、どれぐらいの人間を食ったのかしら?」
 「いいえ、彼女はすぐに山の方に逃げたので、そう簡単に成長することができないはずだったんです」
 「不思議な話ね……」
 「そうなんです」


 ここで話が途切れる。

       

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