彼はまるで外人のような姿をしていた。生まれつきの金髪に、水晶のような独特の色をした両目。口元は何がそんなに楽しいのか分からないが楽し気に歪められており、その隙間からは白い歯が覗いていた。
 来ている服は至って普通の誰もが着るようなもので、非常にラフな格好をしていた。
 ユウキは壁にもたれかかりながら、達也の方を睨み付けてくる。


 「実験体第三号が姿をくらました。至急捜索に行ってくれ」
 「へー、それはそれは……予想外の事態、ですかな?」
 「そうだ」
 「嘘つけこら」
 「…………」
 「予想の範囲内なんだろ? さも嬉し気に完璧だ、とか呟いていたくせに」
 「悪いか?」
 「悪くない」
 「なら、捜索してくれ。 たぶん研究所内部にいると思うんだが……」
 「了解」


 ユウキはそう呟くと、額に指をあてた。目を閉ざすと黙りこくる。
 しばらくの間そうしていたユウキだが、五分も経たぬうちに顔を上げると言った。


 「オーケー、見つけた」
 「そうか……で、どこにいる?」
 「柳葉町の中心部」
 「何!?」


 最悪だった。
 そこは今、魔法少女たちによる襲撃で完全には廃墟と化した町だった。第一級危険区域に指定されており、研究所を狙う敵がうようよしている場所でもある。毎日のように戦闘が行われており、誰も寄り付かない。
 おまけにまだ接続作業すらできていない。このままでは彼女の命も長くない。
 さすがの達也の顔も青くなる。
 完全に予想外だった。
 まさかあの町にまで行く力があるとは思ってもいなかったのだ。
 ユウキは悔しそうに顔を歪める達也を見て愉快そうに笑いだした。


 「ハッハッハッ!! さすがにここまでは予想出来てなかったか!!」
 「くそがッ!! ユウキ、救出に向かってくれ」
 「分かったよ。ちょっと行ってくるわ」
 「行ってこい」


 そう言って笑顔を消して真剣な顔つきに戻るユウキ
 だが、一つだけ聞きそびれたことがあるのを思い出すと達也に尋ねる。


 「あのさ、ひとついい?」
 「なんだ?」
 「名前、彼女の名前は何だよ。 さすがに実験体三号な無いだろ」
 「あぁ、名前か」


 すっかり忘れていた。
 少しだけ考えた後、達也はこう答えた。


 「彼女の名前は……マリアだ」
 「へー……いい名前じゃん」
 「いいから行ってこい」
 「了解ッと」


 軽い感じでそう返事したユウキはにやりと笑った後で、忽然と姿を消した。それは先ほどマリアと呼ばれた少女が消えた時とまったく同じ様子だった。
 すでにその様子を何度も見てきている達也は慣れたもので、大した驚きもなくそれを見送ると小さく呟いた。


 「さて、どうなることやら」


 まさに神のみぞ知る、だった。