それでもマリアは顔を上げると、自分に向かって来るいくつかの光弾を視界に入れる。


 「クッ!!」


 ちらりと自分の隣を見る。
 そして座標をそこに設定すると、瞬間移動能力を発動する。
 マリアの姿が消え、一瞬のうちに隣に移動する。そして、さっきまでマリアがいた場所を光弾は通り抜けていくと、その後ろにいた敵たちに命中し、大爆発を起こす。また何人か死んだのが分かる。
 でも気にしない。


 「…………」
 「ハァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 地面を蹴って飛び出すと、目の前にいた剣の少女の首を切り裂く。
 思いの外軽い感触のあと、ポーンと首が飛んで行く。
 そのままくるりと体を動かすと、左腕を振るい、その周辺にいた少女達の魔力を吸収していく。順調に敵を殲滅していくマリア。
 その目は、決心した女の目だった。
 マリアが一人戦っていると、突然声がかかる。


 「マリア!! 右だ!!」
 「クライシス!?」 


 反射的に右を見る。
 すると、一人の魔法少女がとびかかってくるのが見えた。


 「いつの間にっ!!」


 そう叫びながら剣を構え直し、その少女と相対する。
 マリアは始め見た時、その少女が翼の少女にしか見えなかった。なぜなら、翼の少女の物とまったく同じ麗装をしていたからだ。しかし、よくよく見ると違う点がいくつもあることが分かった。


 まず、翼がない。
 それに顔につけている仮面が全く違う。陶磁器でできた白いものではなく、まるでオペラ座の怪人がつけるような、顔の四分の一だけを隠すような独特なデザインをしたものだった。
 それに、纏っている雰囲気も別物だ。
 最後に仮面から除くその瞳
 翼の少女の無機質なものとまったく違う
 完全に死んだ魚の目
 どす黒く、濁っていた。


 マリアはその少女の姿に困惑する。だがそれも一瞬だった。
 敵の姿がよく分からなくても、やることに変わりはない。戦うだけだ。
 マリアは剣を振りかざし、その少女に向かって飛んで行った。


 「あああああああああああ!!!」
 「…………うるさいな」


 初めて聞く声
 まるで透き通るようなものだった。