その時、大量の何かが宙を舞って、少女の方に向かい飛んできた。


 「えっ!?」
 それは不思議な姿をしていた。純白の翼を生やし、それを大きく広げ風に乗っている。顔には白い仮面をつけて手には日本刀のような刀を一本手にしていた。しかし、そんな天使のような姿よりももっと目を引くものがあった。
 彼女たちは合計十人ほどいたが、どれも同じ姿をしていたのだ。
 翼を持った彼女たちは優雅に宙を舞っていたが、座り込む少女の姿を見た瞬間に動きを止め、ゆっくりと高度を下げていくと地面に降り立った。まるで隊列を組むように道を歩きながら少女の方に向かってくる。
 それを見た瞬間、少女は強い殺気が襲ってくるのが分かった。
 どうやら彼女たちが放っているらしい。

 敵だ。

 本能的にそれを察した。


 「に……逃げなきゃ……」
 そう呟きながら急いで立ち上がると、背を向けて逃げ出そうとする。
 だがうまいこと力が入らず、足がもつれて倒れてしまう。


 「ふぎゅっ!!」
 顔面から地面に倒れ込む。鼻を強く強打し、顔面に痛みが走る。
 一瞬、そのままピクリとも動けなくなるがすぐに気を取り直し、体を起こす。だが今度は焦ったせいで立ち上がることができず、中途半端な格好で尻もちをついてしまう。口の中を鉄の味が広がるのが分かった、鼻血だろう。
 少女は息をのむと、向かってくる翼の敵の方を見る。
 彼女たちはわざわざ地に足をつけて走りながらこちらに向かって来る。
 このままでは三十秒もしないうちで自分はあの刀に切り刻まれてしまうだろう。


 「ヒッ!?」


 確かな死の予感がする。
 少女怯えて顔を引きつらせると、じっと目の前の敵を見る。
 万事休すか
 そう思われた時、周囲に男の声が響く。


 「そうはさせないぜ!!」
 「え――ッ!?」


 突然、少女の目の前に一人の少年が姿を躍らせる。
 ユウキだ。

 少し離れたところに飛んだ彼は、ようやく追いついたのだ。
 まずは少女の無事を確認したいところだったが、あいにく時間がなさそうだった。まずは安全の確保を優先することにした。
 向かってくる敵に向かって右腕を掲げると狙いをつける。
 自信満々のその姿とは対照的に、少女は不安でいっぱいになった。
 どう見ても武器を持ち、翼を生やした彼女たちと比べて何も持っていない彼の姿は非常に心細く見えたのだ。どう考えても敵は人知を超えた存在だ、それに無謀にも素手で移動網としているのだ。
 少女は声を上げるとユウキに話しかける。


 「ねぇ!!」
 「なんだよお前」
 「逃げないの?」
 「はぁ? 何でだよ」
 「だって……敵は武器を持ってるんだよ」


  その言葉を聞いてユウキはさもおかし気に唇の端を上げるとあざ笑うかのような声で言った。


 「ハッ!! 何だその程度の事か」
 「その程度って!!」
 「世界最強の超能力者の力、舐めるなよ」
 「え?」