ルナは再び突然目の前に現れたマリアを見て顔面を蒼白にする。


 「なっ――ッ!!」
 「っ!! 近すぎる!!」


 どうやら微妙に座標がずれていたらしい。
 ほとんど肉薄していると言って過言ではないような距離にまで近づいてしまう。
 だが、あまり問題はなかった。


 「死ねッ!!!」
 「クッ!!!」
 『ルナっ!!!』


 マリアはまるで突きでも繰り出すかのように左腕を突き出す。
 それと同時に、サンはルナの腹から生えるように出てくる。
 結果、マリアの攻撃はサンの胸元に命中した。



 「「え?」」



 ルナとマリアの声が重なる。
 それでもマリアは能力を止めることなく、サンの魔力を吸収していく。左腕から魔力が伝わってきて、マリアの体に流れ込んでくる。体温が一気に上がり、全身に力が満ち溢れる。翼の少女の物とはまた違う感覚
 魔法少女の、純粋な魔力を吸収した結果だ。
 人間一人が生きて死ぬ、その一生分に等しいエネルギーがなだれ込んでくる。
 翼の少女の物とはまた違う、何とも言えない感覚だった。


 「――ッ!!」


 マリアは腕を引くと、一度地面を蹴って距離を取った。
 それと同時にサンの目から光が失われると、全身の力が抜けて、顔面から地面へ向かってゆっくりと倒れ込む。鼻の頭が地面に当たると同時に、パンッという軽い音がして、サンの体が霧散する。
 ルナは、サンが消えるのをジッと見ていた。
 マリアも一緒に見ていた。
 だが、お互い考えているのは全く違った。ルナはどうしてこうなったのかうまく理解できず、困惑しており、マリアは少し絶望していた。だが、自分は悪くないという考えで無理矢理罪悪感から目を逸らす。
 まだ敵はいるのだ。
 逃げるわけにはいかない。
 気を取り直して戦闘態勢をとるマリア
 すると、ルナの顔が目に飛び込んできた。


 「あ」


 うっかり声が漏れる。
 目の前にいる少女の顔
 それは


 まるで何もないかのようだった。
 真顔を通り越して、白紙の紙をぺたりと張り付けたように何もない。目の光もすっかり失われてのっぺりとしている。全ての感情が消え去ったかのような顔。それに、言いようも知れぬ恐怖感を覚えるマリア
 それもつかの間だった。
 ルナは表情を一変させると、顔を思いっきり歪ませ、叫んだ。


 「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!! よくもサンをぉ!!!!!!!!」
 「……――ッ!!!」


 気圧されるマリア
 額から嫌な汗が流れていく。
 ルナは銃口を向けると、流れる涙を振り払いながら引き金を引こうとした。
 マリアは、マリアはどうにも体が動かなかった。まるで金縛りにあったかのように、指一本、まばたきすらすることもできなかった。


 その時
 トッと軽い音がして、ルナの首元から七節棍が生える。


 「カハッ!!」
 「油断大敵」


 傷跡と口元から真っ赤な血が流れていく。
 いつの間にか後ろに回っていた朱鷺は七節棍を引き抜くと、そのまま一歩下がった。