「……クッ……」


 ルナは何とか後ろを向いて、誰が来たのか確認しようと、後ろを振り向こうとする。
 だが、手遅れだった。
 朱鷺は高速で腕を振り、七節棍をもう一度まっすぐ突き出すと、今度はルナの心臓を的確に突き刺した。確実にとどめを刺す、朱鷺はどこまで行っても冷静だった。マリアは体の二か所に空いた穴から血を流すルナの姿を見て固まったままだった。
 自らの敗北を悟ったルナは最後にマリアのことをジッと睨み付けるとこう呟いた。


 「死ね」
 「…………」


 マリアは
 何も言うことができなかった。
 崩れ落ちたルナの死体を横目に朱鷺はマリアに冷たい視線を向け、こう言った。


 「お前もこうなりたいか?」
 「――ッ!!」
 「いやなら、死ね」
 「…………」
 「もしくは、戦え」


 そう言って朱鷺は再び戦場に舞い戻っていった。
 マリアは
 目の前の死体に自分の姿を重ねながらつぶやいた。


 「……私は……私はッ!!」


 顔を上げる。
 まだ敵はいる


 「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


 自らにこびりついた血を吹き払うがごとく、マリアは飛び出していった。


 ユウキは何となくマリアのことが気にかかった。
 決して、死んだのかもとか、負けたかもという心配ではない。何となく吹っ切れたように見えた彼女でも、まだ内心では悩み続けている。それはちょっとしたきっかけで崩れ落ちてしまうものだ。
 仮にマリアがそうなってしまったら
 それが心配だったのだ。
 マリアがどこにいるのかは把握できている。
 ユウキは隙を見つけ、チラリと顔を向ける。

 すると、驚いた。

 マリアの姿は変貌していた。

 顔の左半分に紫色の筋が走り、黒ずんでいる。その上、左目の動向が真っ赤に輝き、白目の部分は何とも言えない不思議な色合いを醸し出している。口からはまるで蒸気のように白い煙を吐き出している。全身の隅々から魔力があふれ出し、どす黒いオーラがマリアを中心に渦巻いている。
 左腕にまとっている魔力の腕は、まるで自分の意志を持っているかのようにウネウネとうごめいていた。
 そして髪の毛の先が粒子化しているように、先だけが
 ユウキは、思い出した。


 原初の魔法少女の姿を


 「あああああああああああああああああああああ!!!!!」



 絶叫しながら剣を振るい、血の雨の中踊り狂うマリア
 その口元は
 まるで笑っているかのように歪んでいた。