マリアは体の節々がやけに軋むので大きく伸びをすると全身を伸ばす。
 ユウキは何となくマリアのことを直視できなかったので、目を逸らすと自分の席に座り込む。


 「ちょっとさ、ショックだったんだよね」
 「何がさ」
 「フレイヤさんのおかげで私は、少なくとも戦えるようにはなったと思ってたんだよね」
 「で?」
 「でもさ、あの魔法少女を殺した時、凄い罪悪感が襲い掛かって来たんだよ」
 「…………」
 「自分のためなら、私はどこまでも戦えるって信じてたんだ」
 「それで、どうした?」
 「でも、なんかうまくいかなかった」
 「そうか」


 ユウキはなんだか喉が渇いて来たのでパッと指を立てると、水の入ったポットとココアの粉が詰まった瓶を持ってくる。そして、ポットに掌を向けると、内部の水を温める。それをコップに注ぎ粉を混ぜる。
 超能力を駆使してそれらをそつなくこなす
 見事だったが、マリアはそれを無視して話を続ける。


 「なんか、あの魔法少女の顔見た瞬間に嫌になった」
 「それまた、どうしてだよ」
 「なんか、あの絶望的な顔が……怖かった」


 まるで瞼の裏に焼き付いているかのように、あの絶望した顔が忘れられない。
 幽霊のようにひっそりと自分の後ろに立っているかのように思える。ゾッとした寒気が背中に張り付いて、自分のことを監視しているような気がする。それはただの想像であることは理解しているのだが、無視することができない。
 ユウキが差し出してきたココアを受け取り一口飲んでから、マリアは自嘲気味に笑って言葉を続けた。


 「私、一つだけ心配なことがあるんだ」
 「なんだよ、それは」


 話が本題に入って事を察して、真剣な顔をするユウキ
 マリアは顔を上げ、両目から涙を垂れ流しながらこう言った。


 「戦いが終わった後、私たちってどうなるの?」
 「……え?」
 「この前町でいる人たちみたいに、普通に暮らせるのかなぁ?」
 「…………」


 なるほど
 それはユウキも悩んでいることだった。
 こんな訳の分からない能力と体で、一般人と同じような生活を送れるようになるのか、それを達也が許可するのか、非常に気になるところだった。ユウキはなるようになると思っているのだが、どうやらマリアはかなり深く悩み込んでいるようだった。
 涙をダラダラ流しながら、言葉を続ける。
 「またさ、この間みたいに笑顔で遊びに行ったりできるのかなぁ?」
 「…………」
 「ハハハハハハハハ、なんか泣けてきた」


 そう言って目元をぬぐうマリア
 ユウキは少し悩んだ後、こういった。


 「ま、平気だろ」
 「え?」
 「俺も一緒にいてやるからさ」
 「え? それって」
 「だから、俺がお前と遊んでやるよ。この間、お前はすごい楽しそうだったじゃないか」
 「…………」
 「な?」


 そう言って笑顔を向けるユウキ
 マリアはそれを直視することができず、顔を背けると今度は安堵の笑みを浮かべてから言った。


 「ありがと、ユウキ」
 「うん、まぁ、構わんよ」
 「フフフ、本当にありがとうね」
 「そこまで感謝されると悪い気しないな」


 二人はそう言って笑いあった。