アリヤは
最後に詩音の顔を見ようと思い、上半身の死体の前に向かった。
愛しい人傍にぽつりと立つ。
見たくない気持ちと、見たい気持ちが半々に混ざり合ったまま、アリヤはジッと頭を下げて見下ろす。すると、さっきまで戦っていたのが嘘のよう。真っ青な顔をした詩音の姿が目に飛び込んできた。
久しぶりに
こうして静かに見つめあう気がする。
アリヤは何とも言えない気持ちになった。
何か言わなければいけない。
そう思い、アリヤはゆっくりと口を開いた。
「…………私は……」
その瞬間
トスッという軽い音がした。
それと同時にアリヤの唇の端から赤い血を垂れていく。何が起きたのかさっぱり分からないまま、ぎこちなく首を曲げると異変のする胸元を見てみる。すると、胸の中心から一本の氷柱が生えているのが見えた。
それはどこから伸びているのかというと、足元にある詩音の左腕だった。
それは寸分違わず心臓を貫いていた。
アリヤは吐血しながら、小さく呟いた。
「…………え?」
すると
それに応えるかのように詩音の顔がニィッと歪むと、口が開いた。
「悪いなアリヤ……死ね……」
アリヤはゆっくりと意識が遠のいていくのを感じた。
ひっそりと冷たい感触が背中から迫ってくる。ゾッとするような恐怖感と、どこまでも落ちていく感覚がアリヤの温度を下げていく。目の前から光がゆっくりと消えていく。これで終わりという実感がどうしようもなく感じられる。
死ぬ
死ぬのだ。
アリヤは最後に、
小さく笑うと、こう言った。
「…………詩音となら…………いい」
「ッ……ありがとうな」
次の瞬間
アリヤはゆっくりと目を閉じると、そのまま氷柱に沿って詩音の体の上へと倒れていった。詩音は最後にアリヤが自分の体にかぶさったのを感じ、完全に意識が途切れた。最後の瞬間は、お互いの温かみを感じることができた。
それだけが唯一救いだったのかもしれない。
こうして
アリヤと詩音は死んだ。