その日
 世界中で異変が起きた。
 翼の少女が一斉に粒子と化し、消えていったのだ。世界の主要都市を占領していた数多の少女たちが何の前触れもなしに崩れさり、粒子が風に乗り吹き飛ぶ。いきなりのことにアリス側の魔法少女たちはただただ困惑することしかできなかった。
 しかし、一足早く達也から情報を得ていた国連軍はこの隙に動き、一気に攻勢に出た。魔法少女軍が優勢だったのが嘘のよう、何十人もの魔法少女は善戦したものの、今までとは一転、数の暴力に押しつぶされて死んでいった。
 一瞬で勢力図は塗り替えられた。
 戦力が激減した今、もはや勝ったと言っても過言ではなかった。



 柳葉町から少し離れた場所にあるビルの上でアリスは佇んでいた。
 その周囲に人影は全くなく、たった一人、照り付ける太陽の中で黒い体を揺らめかせていた。さっきまで自分の周りには翼の少女達がひしめいたのだが、あっという間に全員消えてしまった。
 アリヤが死んだことはそれですぐに分かった。
 あっという間に、アリスはたった一人になった。
 剣を携えて、空を仰ぎ見る。
 『…………』
 アリスは既に以心伝心能力を使用して全世界の魔法少女たちに撤退し、日本に集合するよう号令をかけた。だが、そのうち何人が集まってこれるだろうか。さすがのアリスにもその予想はつかなかった。
 自分の元を離れる魔法少女も多少出てくるだろう

 これでは勝てない。
 翼の少女がいるからと、絶望少女の数を増やすことを怠ったツケが回って来た。
 今からではもう間に合わないだろう。
 こうなると手段は一つしかない。


 自分が前線に出るしかない。


 『ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』


 無意味に笑いがこみ上げてくる。
 ここからが本番だ。


 アリスは笑いながら首を動かすとある一点を凝視する。

 その視線の先には

 研究所があった。