呆気にとられる四人
 それとほぼ同時にいくつかの画面が彼女たちの目の前に表示される。そこには確かに黒い粒子をまき散らし、森の木々の中を爆心する原初の魔法少女の姿があった。また、一つの画面には予想到達時間も映し出されている。
 まだ研究所までの距離はあるとはいえ、アリスの速度は規格外、シールドがある位置まで十五分もかからない。
 それが分かっているので、達也は急いでいた。
 一方で何も知らないマリアは一人焦っていた。


 「ど、どうするの!! 迎え撃つの!? このままじゃ」
 「慌てるな」


 達也の声がマリアの頭を冷やしていく。
 カタカタカタとキーボードを叩く音が響く中、悪魔のような凄惨な笑みを浮かべ、達也はこう言い放った。


 「この研究所がただの木偶の棒じゃないところを見せてやるよ」


 そう言いながら、もう一つ大きな画面を浮かび上がらせる。そこには研究所を中心とした衛星写真が写っている。そこには研究所にほど近い位置にある赤い大きな点と、それを囲むようにいくつもの点がある。
 点の一つ一つが魔法少女の放つ魔力を示している。
 それをチラリと確認して、あることに気が付く。
 思いの外、敵の数が少ない。
 達也はそれでいろいろなことを即座に理解した。
 達也の予想ではあと二日はアリスは来ないはずだった。その根拠は世界中に散らばっている魔法少女たちを集合させてから来るだろうから。しかし、どうやらアリスは待ちきれなかったらしい。
 相変わらずせっかちな奴だ。
 達也の頬がにやける。
 あの頃から何も変わっていない。


 「行くぞ!!」


 準備は整った。
 戦闘開始だ。

 木々の間をすり抜けて、まるで黒い幽霊のようにアリスは突き進んでいく。
 大きく広げた両手にはしっかりと二本の剣が握りこまれている。少しじめっとした空気が頬を切っていくが、アリスにはもうそれを感じ取ることはできない。ただ、粒子と殺意をまき散らして進みだけだ。
 目の前には研究所と、それを防護する魔力の壁
 そんなもの、アリスの前では紙切れに等しいものだ。
 今の原初の魔法少女にあの頃のアリスの記憶は断続的にしか残っていない。それゆえか、懐かしの白い建物の姿を見ても、特に何も感じなかった。
 ただ、そこには自分の邪魔をするものがいる。


 そして、殺すべき相手がいる。



 『ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!』


 意味もなく笑いが止まらない。
 アリスは今日も絶好調だ。