マリアはジッとモニターを見ながら、心配そうな顔をする。
どうにも押されているようにしか見えない。確かにすごい武装ではあるが、まだ一度もアリスを殺すことに成功していない。ただただ魔力と弾薬の無駄遣いをしているだけにしか見えない。
だが、達也からはそこまで追い詰められている雰囲気は出ていなかった。
どういう訳だろうか
マリアが困惑していると、その雰囲気を過敏に察し、達也が答えた。
「いいかマリア、これはシールド生成装置までの時間稼ぎだ」
「え?」
「どうせあまり時間をかけずシールドは消え、この研究所は破壊される」
「…………」
「戦闘システムを全て全自動に切り替えるまでの辛抱さ」
「……一つ、聞いていい?」
「手早くな」
マリアは前から疑問だったことをぶつけてみることにした。
「なんで、こんな強いのにアリスは戦わないの?」
「あぁ、そんなことか」
馬鹿にするようにそう呟き、達也は早口で答えた。
「いいか、アリスはいつもは全世界を飛び回り、翼の少女や絶望少女に魔力のコアを生成し、与えていた。それが主な仕事だ。ところが、翼の少女が消えて手持無沙汰になり、劣勢になった。どういうことか分かるか?」
「……なるほど」
手が空き、不利になったからこちらを叩きのめしに来た
つまりはそういうことだ。理にかなっている。
マリアはそれを聞き、一層不安になった。アリスの強さがはっきりとわかっているから、根拠もなく自信に満ち溢れているように見える達也が非常に恐ろしかったのだ。どう考えても勝てるはずがない。
しかし
どういう訳か彼はまるで子供のように楽しんでいるのだ。
訳が分からない。
「第一線が突破されたか」
放心していると、そんな呟きが聞こえてくる。
驚いて正気に戻り、ぱっと顔を上げてモニターを見てみると、ポットとドローンのほとんどが破壊され、攻撃の手が緩んだ隙にアリスが相当な距離を進んでいるのが分かった。すっかり燃え広がった炎を背中に、アリスは道なき道を進んでいる。
達也は急いで第二線を起動させると、今度は地面からさっきよりも威力を高くした代わりに拡散性を抑えたレーザーを搭載したポットを何十個と地面からは展開させる。さらに、今度は空を飛ぶのではなく地面を走るタイプのドローンを発進させた。
こちらは機動性を重視したもので、火力こそやや劣るがこれで十分なはずだった。
「さて、どうする?」
あと少し
あと少しでこちらの作業は終わる
それまで凌ぎ切ればこちらの勝ちだ。