「この間説明したとおりだ。頼むぞ」
 「御意」
 「お前は信頼できるからな、あとは任せた」
 「フン」


 何が気に食わないのか分からないが、朱鷺は苛立たし気に鼻を鳴らした後、所長室から走り去り、どこかへと向かって行った。その背中を見送ってから、今度はデルタの前に行く。
 そしてジッとデルタの姿を見下ろしながら、優しい声でこう話しかけた。


 「何もしてやれなくてすまないな。デルタ」
 「ううン。気にしないデ、達也の役に立てるだけで私は満足だかラ」
 「それでもだ。俺のために、ありがとうな」
 「…………それだけで十分」
 「そうか、じゃあ最後に頼まれてくれ」
 「分かっタ。打ち合わせ通りニ」


 そう言ってデルタも所長室から飛び出していく。
 次に達也はユウキの前に来る。そして、お互い眉をひそめて睨みあう。なんだか不穏な空気が流れるが、どうやら無言のままやり取りをしているだけらしい。しかしそれではいつまでたっても要点は伝わらない。
 達也は口を開いた。


 「分かっているな」
 「あぁ、俺の役目だろう?」
 「マリアの事、任せたぞ」
 「ドンと来いってんだ」
 「お前は強いからな。ここで待ってろよ」
 「おう」


 簡単に言葉を交わした後で達也は最後にマリアの前に来る。
 達也は相変わらずの目でマリアに穴でもあけるように睨み付ける。何となく、正面から視線を合わせることに躊躇した彼女は、そっと目を逸らすと何の意味もなく部屋の隅を眺めてみる。一瞬だけ見えた達也の目
 それは酷く悲しいものだった。
 しばらくの間、無言のままマリアを見る達也
 居心地の悪さが限界を迎えた彼女は何か言おうと思い口を開いたとき
 達也が話を始めた。


 「君は、本当にアリスに似ている」
 「…………」


 また

 また言われた

 少し嫌な気持ちになる。
 しかし、達也の場合その続きがあった。


 「でもそれ以上に………似ている」
 「え?」
 「マリア、君は世界で唯一アリスに勝てる魔法少女だ」
 「それが……?」
 「しかし、それは決して能力が、という意味だけではない」
 「それって……」


 どういう意味?
 そう尋ねようとしたとき
 達也が両腕をマリアの肩に乗せ、強い力で掴んできた。すると必然的に二人の目と目が合うことになる。でも全く何も気にすることなく、達也は興奮気味に叫び始めた。