「これだ!!」
 「こ、これって……」


 マリアはユウキが指さす物を見て、目を丸くして驚く。
 エレベーターの乗り、地下十数階まで降りたところにあったのは巨大なポカッと開いた広い空間だった。そして、そこに鎮座していたのは知識としては理解していたが、実際に初めて目にする乗り物だった。
 それは電車だ。
 と言っても、本に出ていたように長い鉄の蛇のようではなく、一両編成の小さい物だ。
 それにデルタと朱鷺は既に乗り込んでいて、発車準備を整えていた。


 開いていたドアから中に入ると、電車特有の無機質な椅子がいくつも並んでいた。そのうちのいくつかには何かが詰まった袋がポンッと置かれていた。何が入っているのか少し気になり、中を覗いてみたら量産型コアがいくつも転がりこんでいた。
 デルタは運転席で、頭から伸びるコードを何かしらの機械につないで操作を続けている。
 朱鷺は一度電車から降りると、近くにある電力供給を示すパネルの確認している。ユウキは座り込んで何もしないでいた、マイペースだ。
 マリアもしょうがないので彼の隣に座る。
 そのまま待ていると、五分も経たないうちに電車が動き出した。地面を滑るように進みだすと、速度が一気に上昇し、直進していく。あっという間にさっきまでいたホームが遠ざかっていき、曲がり角を曲がった瞬間に視界から消えていく。
 電車という物はやけにうるさい音がすると思っていたマリアは、その静かな発車に驚いた。
 それを察したのか、デルタはマリアに話しかける。


 「これはリニア式なノ」
 「リニア?」
 「電磁石で走ってル。だから静かだシ、早イ」
 「え? えぇ??」


 よく意味も理屈も分からないが、とりあえずそういうことなのだろう。
 それで納得することにした。


 その後は誰一人として口を開こうとしなかった。まるでパンドラの箱のように、しっかりと。そのせいか、電車の中は嫌な感じに静かだった。
 殆ど動きを見せないマリア達と違い、デルタだけはしきりに研究所の方を向いていた。表情が変わらないので何を考えているかまでは分からないが、どうやら、達也のことを気にしているらしい。今にも戻りたそうだった。
 だが、ピクリとも動こうとしない。
 マリアは彼女の姿に何か悲しいものを感じた。