達也は一人、自分の人生について思い返していた。
 楽しい思い出があるわけじゃない。
 嫌な事ばかりといっても過言ではない。
 瀬戸達也はいたって普通の家庭の一人っ子として生まれた。母親は自分よりも子供のことを考えることができる専業主婦で、父親はどこかの大学で若いなりにも教授か何かをやっていたらしい。


 普通に幸せな家庭で、達也は三歳を超えるまで普通に過ごしていた。
 まだ、この頃に天才の予兆は見えなかった。
 ところが、転機が訪れることとなる。


 父親がある事件を起こしたのだ。話によると、大学の研究費を稼ぐために色々とやらかしたそう。だが、詳しいことはほとんど知らない。なぜならそのことについて話してくれる人はどこにもいなかったからだ。
 父親が事件をおこした結果どうなったかというと、母親はマスコミによって酷い目にあわされたのだ。
 そのため、逃げるように今まで住んでいた家から狭いマンションへと引っ越した。そして近所のスーパーでパートを始めた。貯金はそこそこあったがそれだけで暮らせるはずがなかったから。
 母が働きに出たことで、幼い達也は一人で家で過ごす事が多くなった。
 幼稚園や保育園には行けなかった。近くに良いところがなかったからだ。
 そのため、ある程度物心ついた頃から達也は暇を持て余すようになった。



 そんな彼が目を付けたもの
 それは母親が捨てられずに持ってきた父親の本や、研究資料、論文などだった。それは大量にあって、無造作に段ボール箱の中に突っ込まれていた。すでにある程度文字が読めるようになっていた達也は興味本位でそれを手に取った。
 しかし、読めない字はあるし、意味の分からない言葉もそこら辺にある。
 そういう時はやはり父親の残した辞書を片手に読み進めていった。
 こうして達也は急速にその才能を開花させていった。