「私は……アリス」

 「え?」


 御雷は驚く
 確かにアリスという名の魔法少女は知っている。研究所に突入していったのも確かに、その魔法少女だった。しかし、それは決して目の前にいる、暗い麗装を纏った少女ではなく、あの原初の魔法少女としてアリスだ。
 明らかに、おかしい
 そう思った御雷はより一層険し顔でアリスに向けて槍を突き出す。


 「嘘つけぇい!!」
 「……………」
 「原初の魔法少女は、そんな人間の姿をしてねぇぞ」
 「え?」


 ここで初めて気が付いた。
 アリスは両手を上げると、頭を下げる。するとそこには
 二つの掌があった。


 「え?」


 再びそう呟く。
 これは何? とでも言いたげなその口調に御雷はキョトンとした顔をする。
 そこでアリスは気が付いた。

 人間の体に戻っている。

 何が起きたか分からないが分子レベルで魔力が自身の体と干渉したせいで肉体が一時的に元に戻ったのか
 もしくは
 心境の変化が肉体にも表れたのか

 アリスはふと、手を上げると頬に触れる。
 なぜかわからないが濡れている。それがどうしてなのか、理解ができない。
 が、五分と立たず、気が付いた。

 涙だ。
 これは涙だ。

 アリスは無表情のまま驚く
 泣くなんて何年ぶりだろう。記憶のある限り、最後に泣いたのはあの病院での屋上。あの少年と最後に会った時だろうか。あまりにも昔なことに記憶が殆ど失われてしまい、正確に思い出すことができない。
 そこで
 アリスはふと思う。

 私はここで何をしている?

 私は何だ?

 ここは
 どこ?


 「…………」


 アリスは笑いたかった。
 笑いたかったが

 笑えなかった。

 いつもみたいに

 すべてを笑い飛ばして何も考えなければ非常に楽になるのに
 楽になれない。