「…………………………」


 ボソリとアリスが呟く声がする。
 御雷はそれを聞き取れず、キョトンとした顔をする。


 「おい、今何て」
 「知らない」


 聞き返そうとする。
 だがその前に、アリスが動いた。


 「カッ!!」

 そんな声を上げる。
 それと同時に体から黒い霧がブワッと噴き出すと、周囲の空間を渦巻き始める。御雷にはそれが何か見当がついていた。大量の魔力を宿した粒子だ。それだけではない、ゆっくりと黒い水晶体のような物もいくつか生まれてくる。
 黒い粒子はやがてアリスの全身を包み込むと、そのまま漆黒の雲の中に彼女の姿を飲み込んでいく。そして、肉体、麗装に接触するたびにそれを粒子と変化させ、さらに体の奥へ奥へと侵入していく。
 順調に粒子化は進んで行くが、それには大きな代償がある。
 激痛が伴うのだ。
 全身が引き裂かれ、バラバラになっていくような感覚が襲い来る。頭がバックリと割れて、中身が全てこぼれ落ちていくような気さえする。吐き気を催す。意識が遠ざかっていく、心臓の鼓動がドンドン大きくなっていく。
 血液の代わりに、粒子がより一層強く噴き出す
 まるで世界が終わるような痛み、こんなもの、耐え切れずに絶叫してもおかしくない。
 だが
 アリスは歯を食いしばり、必死にそれを堪えた。


 数分後


 さっきまでアリスがいた場所に、原初の魔法少女が立っていた。
 御雷は驚く。あの少女がどうしてこんなことになったのか、さっぱり理解できなかったのだ。
 だが、一つだけわかった。
 目の前にいるのは、間違いなく原初の魔法少女だ。


 「お前」
 『…………』
 「……素顔、初めて見たわ」
 『――――ッ!!』


 原初の魔法少女は御雷の言葉を無視すると、グイッと首を曲げて遠くを見る。
 すると、不自然に固まった魔力が山中を移動している様子が見て取れた。結構な速度がある。車か、しかし地中を進んでいるあたりそうではなさそうだった。仮にあり得るとしたら、電車だろうか。可能性はなくない。