逃走 その①



 突然、デルタが小さな声を上げるとこう言った。


 「達也のテープがあル」
 「「え?」」
 「自爆したら聞かせるように言われていル」
 「……お願い、聞かせて」
 「言うまでもなイ。聞かせル」


 そう言ってデルタは顔の横に手をやる。
 どうやらこのことを知らないのはユウキとマリアだけらしい。朱鷺は目を閉じたまま、その言葉を聞き流していた。どうやら彼女は興味ないようで、そのままピクリとも動くことが無かった。
 デルタは胴体部分にあるメモリーからデータを引っ張り出すと、頭部にあるスピーカーから音声を再生する。
 すると、やけに落ち着いた達也の声が流される。
 デルタの顔から男の声が聞こえるのは中々シュールだったが、それを笑う余裕はなかった。


 『さてと、計画通りに進んでいると仮定して話をしよう』


 いきなりだった。
 前置きなど何もない、達也らしいマイペースな始まり方だった。


 『今、君たちが向かっているのは研究所から離れた場所にある別の研究所だ。正式名称は小岩井第二研究所という。そこに特別な施設はほとんどない、ただ簡単な魔力生成装置だけとちょっとしたレーダーがある程度だ』
 「それって十分じゃないの?」
 「うるさい、マリア」
 「ごめん」


 素直に謝るマリア
 それに少し拍子抜けするユウキだが、達也の声はそんなこと気にせずに続く。


 『そこからさほど離れてない場所にクライシスが封印されているが、あまり気にしないでいい。いいか、お前たちはそこで何をするか、分かっているな?』
 「……分からないんだけど」
 「だからうるさい」
 「…………」


 素朴な疑問さえ許されないようだ。