「――ッ!?」


 気が付くと景色がガラリと変わっていた。
 どこかの室内らしく、白い壁が目の前に現れた。足元には冷たい床の感触がして、無機質な人口の光が降り注いでいた。さっきまでは外の冷たさが体を蝕んでいたが、今は無機質なそれが全身を包み込んでいる。

 嫌だ。

 反射的にユウキの手をギュッと握ってしまう。
 それに気が付いて、何とも言えない顔をするユウキ


 「おい」
 「な、何よ」
 「手を離せ。痛い」
 「別にいいでしょ!?」
 「いくない」
 「うぅー」


 これ以上不機嫌にさせるのは良くないように思えた。
 なのでおとなしく手を放した。


 「ところで……ここはどこ?」
 「研究所」
 「けんきゅうじょ」
 「俺たちの家、生まれ故郷だ」
 「へー……生まれ故郷?」
 「そうだ」


 そう言ってユウキはへたり込んでいるマリアから離れていくと、出入り口へと向かって行く。扉の隣にある指紋認証用のパネルにタッチする。すると、ピコーンという音がして開いた。
 首を回してそれを見たマリアは何とか持ちこたえると、立ち上がりユウキの後ろに立つ。
 すると、外に廊下が広がっているのが見える。そこも部屋と同じで、冷たい雰囲気だった。


 「じゃあ、行くぞ」
 「こ、これ以上どこへ……」
 「所長室」
 「え? それってどこ?」
 「すぐそこ。デルタも待ってるとさ、ついて来てくれ」
 「で、でも……」
 「俺たちの生みの親もいる」
 「え……? 親……? 誰?」
 「説明が面倒だからついて来てくれ」
 「分かった」


 ユウキは後ろのことを気にせずに迷うことなく廊下を進み続ける。マリアは少し走りながら、必死に追いかけていく。文句を言いたいところだったが、また喧嘩になりそうだったからやめることにした。
 しばらくの間無言で歩き続ける。ただ、カツンカツンという硬い靴底が床を叩く音と、ペタンペタンという間抜けな音だけが響く。


 「お、ここだ」
 「え?」


 ひときわ大きい扉の前で二人は足を止める。ユウキは手早くその扉を開くと中に入っていく。その背中を追いかけるように、マリアもこそこそと中に入る。