朱鷺が来るのを見て、敵の魔法少女は一斉に動かなくなった。
 理由は単純、彼女たちを指揮しているリーダーの魔法少女が、サッと手を上げて後続の魔法少女たちを止めさせたのだ。それにあわせて朱鷺も動きを止めるとその場で仁王のように立ちはだかる。
 彼女の前に立つ魔法少女は計六人
 そのうち、一番前に立つ魔法少女に、朱鷺は見覚えがあった。
 おおよそ自然の物とは思えない真っ赤な髪の毛をして、それとは不釣り合いに落ち着いた色調をした短めの浴衣のような麗装を身にまとう。また、手にはアフリカ投げナイフめいた邪悪な武装が握りこまれていた。
 彼女はハッと目を見開くと小さく呟いた。


 「……朱鷺さん」
 「ふむ、遠藤燈子か……久しぶりだな」


 また、あの史上最悪の絶望少女戦の生き残り
 何年ぶりかの再会だが、朱鷺は彼女のことがどうにも好きではなかった。汚物でも見るような目で彼女の顔を睨み付ける。仮に眼孔で射貫くことができていたら、燈子はこの時点で死んでいただろう。
 代わりと言っては何だが、彼女は気圧されたかのように一歩後ろに下がる。
 朱鷺はそれを見て小さくため息を吐くと、こう言い放った。


 「お前がフレイヤさんを裏切るのは初めての事じゃないが、いい加減嫌気がさしてきた。ここで死んでもらおうか」
 「クッ…………私だって弱くはない」
 「弱者と群がっている辺り、その強さもたかが知れているがな」


 それを聞いて、燈子の後ろにいた魔法少女たちの顔が曇る。
 彼女たちは朱鷺の怖さを知らないのだ。無駄に大きい刀を手にし、鎧のような麗装をにまとった魔法少女が一歩前に出て燈子の隣に立つと、朱鷺のことを睨み付けながら小さな声で話しかけた。


 「あの魔法少女、殺しましょうよ」
 「ちょっと、落ち着いて」
 「何でですか?」
 「あの魔法少女は、強い」
 「でも数では勝っていますよ」
 「そういう問題じゃないのよ」


 燈子はちらりと朱鷺の方を見てから、後ろにいる魔法少女たちに聞こえる声で説明を始めた。


 「いい? フレイヤは質と量を兼ね備えた最強の魔法少女だった……でも、単純な戦闘能力の話をすると、彼女はフレイヤを超える」
 「は? そんなの……」
 「あなたたちは知らない………彼女の身体能力は、普通の魔法少女を軽く超えるわ」
 「…………どういうこと?」
 「見てればわかる」
 「……は?」


 そんな会話を交わしている隙に
 朱鷺は七節棍を握り、それをサッと振るうと地面に一本の線を描く。