振り向く前に、朱鷺が仕掛けた。
 朱鷺の右足がうなると、ヒュッという軽い音と共に宙を切り、首元を狙った回し蹴りが見事に命中する。するとバキンッという儚い音が響き、有馬の首の骨が砕け散った。グニャリと不自然に首が曲がる。
 それと同時に有馬は「かひゅ」と掠れた声を出して、倒れていく。
 あっという間に死体が生まれた。
 朱鷺は見せしめという意味も込めて、その死体をつまみ上げ、投げ捨てると燈子の足元に叩きつける。
 それを見て、残った五人の魔法少女たちはピタリと動きを止める。
 認識を改めた。


 燈子は後ろにいるジャージのように地味な麗装を纏った魔法少女に目配せする。
 それを受けて、その魔法少女は燈子の隣に来ると小さな声で話を始める。


 「宮崎」
 「…………」
 「朱鷺に勝てるとしたら、あなたの能力しかない」
 「…………」
 「キャンディーをみんなに渡しておいて、分かった?」
 「…………」


 宮崎と呼ばれた少女は小さく頷くと、ポケットから紙に包まれた丸い球体をいくつか取り出すと、それを一つ燈子に手渡す。そして、他の子にも与えるべく、その場から離れていった。
 燈子はそれを口に含んでから、一度ナイフを消す。そして、素手のまま構える。
 するとボッという音共に真っ赤な炎が彼女の両腕を包み込むように生まれる。周囲の空気が熱されて、蜃気楼が生み出される。火の粉が散り、燈子の周りにいた魔法少女たちが鬱陶しそうに顔を歪める。
 朱鷺はその炎を懐かしそうに眺めながら、こう言った。


 「しかし、一対五か……」
 「ちょどいいハンデだと思うけど……」
 「面倒だ、これでいい」


 朱鷺がそう言うと同時に、周囲の式神が二つに分かれ、まるで意思でも持っているかのように、地面に刺さっている七節棍の周囲で集結し始める。初めて見るその動きに、燈子は眉をひそめる。
 先に仕掛けるか
 それとも様子を見るべきか
 悩んでいたのだ。