それは彼女のミスだった。
 悩んでいる間に、朱鷺の準備は整ってしまった。
 式神は二つに分かれたまま、人のような形になるとそのまま動きを止めた。ミイラのような中身がスカスカの紙人形が生み出されたことになる。それらは直立不動の姿勢を保ったままじっとしていた。
 だが、朱鷺が拳法の構えをとった瞬間、それらはまるで自らの意思を持っているかのように動き出した。
 急いで腕を伸ばすと地面に突き刺さった七節棍を握りこみ、朱鷺そっくりに先端を魔法少女たちに向けて、腰を低くする。


 「なっ!!」
 「これで三対五、まぁ、対等だな」
 「――ッ!!」


 ぶっちゃけ、宮崎は戦えないので三対四と言って過言ではない。
 もう数で優位に立てなくなった。

 せめて先手は取ろう
 そう思った瞬間
 燈子の目の前に、地面をすべるように移動してきた朱鷺の姿が飛び込んできた。


 「早ッ!!」
 「フン!!」


 隙だらけの彼女の顎を狙って、朱鷺は左手で掌底を繰り出す。
 早すぎて、回避が間に合わない。
 燈子はとっさの判断で動くと、逆に自分からその掌に向かって顎を突き出した。
 それで力を込めるタイミングがずれたのか、それとも打点がずれたのか。掌底はバチンッという軽い音と、ちょっとした衝撃を与えるだけにとどまった。酷いダメージは追っていない。だが、ほっとしたのもつかの間。
 燈子の腹部を鈍い衝撃が襲う。


 「ガッ!!」
 「詰めが甘い」


 右手の拳がめり込んでいる。
 ベキッと儚い音が聞こえてきたことから察するに、あばらが折れたか
 燈子は目を見開き、口の端から涎を流しながら声の出ない苦しみに耐えていた。
 その姿は隙だらけで
 朱鷺からすると格好の的だった。
 怯んでいる隙に追撃をしようと、動く。この至近距離で全力を込めた蹴りを叩きこもうと、右足に力を込める。燈子は、朱鷺のその動きに気が付いていた。気がついていたのだが、体が動かない。
 このままでは腹を蹴り破られるかもしれない。
 そう思った彼女は、何とか両掌を開くと、燃え盛る炎を吐き出す。
 朱鷺はそれを察し、追撃を諦めると後ろにとんで炎を躱す。
 燈子はそれで、一息つくことができた。



 「カハッ!!」
 「お前、何年魔法少女やってるんだ……」
 「う、うるさい……」


 胸の傷に魔力を集中し、何とか骨折だけでも治す。
 そして気丈に顔を上げると朱鷺のことを睨み付ける。