それでも
 死を恐れぬ紙人形は、そのまま何の躊躇もなく突っ込んでいく。
 砂鉄と紙人形がぶつかり合った瞬間
 バシュッという音をたてて式神が大量に切り裂かれる。
 紙人形の体がバラバラになり、紙の破片が周囲にまき散らされる。


 「っ!!」


 シノブは勝ち誇る。
 紙人形の姿が消えたことで、勝ったと思ったのだ。
 しかしその認識が甘かったことはすぐに分かった。
 舞い散る紙を吹き飛ばし、七節棍だけが真っ直ぐ突っ込んでくると、シノブの左胸を突き抜けたのだ。すっかり油断していたシノブは、それを避けることができず、致命傷を負うこととなった。
 ギリギリ心臓こそ外れていたが、酷い傷だった。
 噎せ返るほどの量の血がこみ上げてきて、シノブの口内を一杯にする。体から力が抜けていき、膝がガックリ折れる。


 「――ッ!!!」


 シノブは薄れる意識の中、自らの勘違いを悔いていた。
 紙人形にばかり攻撃を仕掛けていたが、それが最大の過ちだ。あれは式神で構成されているただの物、おそらくだが、あれの本体は七節棍だ。七節棍の動きに合わせて、式神を人型に操作しているだけなのだろう。
 つまり
 紙人形を攻撃しても何の意味もないのだ。


 「グッ…………」


 手足がしびれてくる。
 磁力も失われると、鎖が力なく垂れる。
 短い間に命に関わる傷を二度も負ってしまった。
 さすがに厳しいものがある。
 シノブは重力に引かれて地面に向かってダイブする。顔面から無様な格好で倒れ込む。鼻を強打してしまい、血管が破れると鼻血が噴き出す。だが、そんなことを気にしている暇などどこにもなかった。
 急いで立て直さなければ
 そう思った瞬間
 彼女の首を七節棍が何の躊躇もなく突き抜けた。


 「カッ……ハッ……」


 彼女の口からこぼれたのは
 断末魔の言葉ではなく、苦し気なうめき声と鮮血だった。
 七節棍はそのままグチャリと肉を裂いてシノブの首を中途半端に切った。噴水顔負けの勢いで大量の赤い液体が噴き出し、そのままシノブはピクリとも動かなくなった。彼女の手から、鎖が滑り落ちていく。
 まだ絶命していないのか、傷口から空気が漏れ出して「かひゅーかひゅー」という音が聞こえてくる。と言ってももう立ち上がって戦う力など残っていない。このまま死ぬのを待つだけだ。
 だが感情の無い七節棍はそんなことを気にしない。
 式神が再集結すると、紙人形が再び形成されて七節棍を手にした。
 そして、残る二人の魔法少女の方へと走りこんでいった。