一方で燈子は追って来る朱鷺が放つ殺気を背中に感じ、冷汗を垂れ流しながら叫んだ。


 「宮崎!!」
 「…………」


 すると、その声に応えるように木の陰からひょっこりと顔を覗かせる。
 そして燈子に目配せをすると、こっくりと小さく頷いた。


 「よし!!」


 万事OK
 これで勝てる。
 燈子は意を決すると、動きを止め、朱鷺の方を見る。すると悪鬼のごとき無表情をする彼女の姿が飛び込んできた。
 心臓がバクンバクンとなる。冷汗が滝のように流れ出ると、顔の表面を伝って落ちていく。気が荒くなり、鳥肌が全身を包んでいく。油断すると胃の中の物をすべて吐き出し、そのまま逃げて行ってしまいそうになる。
 今、目の前にいる魔法少女は自分をはるかに超える実力の持ち主だ。
 少しでも隙を見せればあっさり自分の首は吹き飛ぶ。
 極限まで集中力を高める。


 「フー、フー」
 「死ぬ決意ができたか」


 朱鷺の冷酷な声
 すぐにでも攻撃を仕掛けられるよう、彼女は空中で構えの姿勢をとる。
 一瞬だ。
 一瞬でいいのだ。
 燈子は右腕を前に突き出して、朱鷺の気を逸らす。
 その間にこっそりと左の指を鳴らすと、小さな炎を上げるとそれを朱鷺の目の前まで飛ばす。パッと明るい光が朱鷺の視界を遮り、彼女の意識をそちらに向ける。しかし、その炎では大したダメージなど与えられない。
 だが、燈子にとってそれで十分だった。


 「喰らえ!!」
 「なっ!!」


 燈子は一気に近づくと、朱鷺の体に抱きついたのだ。